2019/5/29 カナダ・トロント大学
(Out of thin air: U of T researchers shorten path to capturing and recycling CO2 with new process)
・ トロント大学が、大気中の CO2 を直接捕獲・リサイクルすることでジェット燃料やプラスチックに変換する電気化学的プロセスを新たに開発。
・ 大気中から捕獲した CO2 を様々な製品に変換する技術は他にも存在するが、エネルギーを多量消費するためコストが上昇し、インセンティブが低減する課題がある。同大学による技術では、エネルギーの損失を回避して全体的なエネルギー効率を向上させる。
・ 大気からの直接的な CO2 捕獲(Direct-air carbon capture)は、化石燃料の代わりに大気中の CO2 から燃料やプラスチック生成を図る新興技術。カナダでは Carbon Engineering 社が、ブリティッシュコロンビア州のスカーミッシュに建設したパイロットプラントにて同技術を実証中。
・ 同技術プロセスでは、アルカリ溶液に空気を通して CO2 を捕獲し、同溶液に溶解した CO2 が形成する炭酸塩を再び CO2 ガスに変換した後、燃料やプラスチックの構成要素となる化学物質を生成する。
・ 炭酸塩から CO2 ガスへの再変換には、化学物質の添加で炭酸塩を固体塩に変換した後に 900℃ 超で加熱して CO2 ガスを生成する方法があるが、このような熱の利用により最終製品のコストが上昇する。
・ 新技術では、電気で化学反応を促進する新設計の電解槽を採用してこの課題に対処。同電解槽は、従来の中間加熱プロセスを省略して炭酸塩を CO2 ガスに変換するプロトンの生成に優れたバイポーラ膜と、CO2 ガスを合成ガスに高速変換する銀ベースの触媒を備える。
・ 同技術は、CO2 を 100%利用して、ワンステップで炭酸塩を合成ガスに転換して精製コストを抑えるもの。新設計の電解槽のように炭酸塩を効果的に処理できるものは他には無い。
・ 研究室での実験では、35%のエネルギー効率で炭酸塩から合成ガスへの変換能力を実証。電解槽は安定した作動を 6 日間超維持した。
・ 同プロセスを産業用にスケールアップするには研究をさらに進める必要があるが、大気からの直接的な CO2 捕獲と利用の実現可能性を概念実証した今回の研究結果は、炭素循環の実現に向けた重要な一歩と考える。
・ 本研究は、カナダ先端研究機構(CIFAR)、Ontario Research Fund およびカナダ自然科学・工学研究機構(NSERC)が支援した。
URL: https://www.utoronto.ca/news/out-thin-air-u-t-researchers-shorten-path-capturing-andrecycling-co2-new-process
(関連情報)
ACS Energy Letters 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
CO2 Electroreduction from Carbonate Electrolyte
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsenergylett.9b00975#
<NEDO海外技術情報より>