2019-05-17 東京大学
化学システム工学専攻 西村 真一主任研究員、大久保 將史准教授、山田 淳夫教授ら
電気自動車や風力・太陽光発電といった環境に優しい技術の社会導入が進む中で、電力を貯蔵・供給する電池への期待が高まり続けています。しかし、現在使用されている電池は充電できる電力量が限られており、また、充電と放電を繰り返すことで性能が低下するため、普及の妨げとなっています。従って、電池の中で電力を蓄える心臓部である電極材料を、より多くの電力を何度でも蓄えることができるように改良することが望まれています。
東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授、大久保將史准教授、西村真一主任研究員らの研究グループは、電力を蓄えることにより構造を修復する「自己修復能力」を持つ電極材料を発見しました。従来の電極材料は、多くの電力を蓄えると不安定化して構造が変化し、顕著に性能劣化することが知られていますが、今回発見した電極材料は充電により安定な構造に変化するため、充電を行うごとに自己修復を繰り返し、性能が落ちないことが分かりました。現象をくわしく解析した結果、この自己修復現象は物質内部でのイオンと空孔の強いクーロン引力が原因となっていることが分かり、多くの電力を何度も蓄えることを可能にする新たな仕組みを実証することに成功しました。従って、このクーロン引力を他の電極材料にも導入することで自己修復能力が発現すること、更には、電池の長寿命化に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2019年5月16日付の英国学術誌Nature Communications電子版に掲載されました。本研究成果の一部は、日本学術振興会科学研究費補助金特別推進研究(No. 15H05701)による支援を受けて行われました。
プレスリリース本文:/shared/press/data/setnws_201905171030524102645612_195911.pdf
Nature Communications : https://www.nature.com/articles/s41467-019-09409-1