「きぼう」にて、第3回小動物飼育ミッションが開始されました。

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2018/04/06 JAXA

2018年4月6日早朝、第3回小動物飼育ミッション「宇宙ストレスにおける環境応答型転写因子Nrf2の役割」が開始されました。

宇宙放射線に起因する酸化ストレス・DNA障害・細胞死や、微小重力に起因するメカニカルストレスによる細胞内シグナル伝達の乱れなど、人類が宇宙環境に滞在した場合に直面する医学的リスク、いわゆる宇宙ストレスが多々あります。
これらのリスクを明らかにし、いかにこの宇宙ストレスを回避し、また、その対策を検討すること重要な課題となります。

本飼育ミッションでは、一群の生体防御遺伝子を制御する転写因子で宇宙ストレスに対しても防御的に働くことが予想される転写因子Nrf2に注目し、Nrf2欠失マウスと野生型マウスを「きぼう」船内で30日程度長期飼育したのち地上に帰還させ、Nrf2活性が宇宙ストレスに対する生体防御に貢献している様子を明らかにし、宇宙環境におけるリスク軽減にNrf2誘導剤が有効であることを実証することを目指します。
酸化ストレスやメカニカルストレスへの適応技術の開発は、発がんや骨粗鬆症などに代表される地上での高齢化・高ストレス社会の課題克服へ新たな応用・展開が期待されます。

小動物飼育装置(MHU)

Mouse Habitat Unit: MHU
最終更新日:2016年4月5日

小動物飼育装置(MHU)のイメージ

「きぼう」生物実験装置

マウス実験用グローブボックス

マウス飼育ケージ

生命の仕組みを解明するカギ、宇宙でのマウス利用研究

宇宙でからだに起こる変化

宇宙に長期間滞在すると、健康な宇宙飛行士でも骨や筋肉が弱くなり、バランス感覚の低下・視神経乳頭浮腫(脳内や脳周辺の圧力上昇が一因で視神経の眼球に入る部分が腫れた状態)・心肥大といった変化も観察されます。
このような健康課題は、宇宙での効果的な運動等により、主に健康管理の面から対策が進められていますが、どのようなメカニズムでこのような変化が起こっているかはわかっていません。

マウスを使った研究がメカニズムを教えてくれる

米国やロシアが小動物(マウス等)を用いて行った宇宙実験では、ヒトと同じ様に小動物でも上記のような 変化が起きることが明らかとなってきています。そこで、マウスを使った研究により遺伝子などの詳細なレベルでのメカニズムの解明が可能ではないかと考えられています。
宇宙でマウスを飼育して行う研究は、詳細なレベルでのサルコペニア(筋量低下)研究評価や骨・筋等への実質影響だけでなく、宇宙環境ストレスが免疫系や中枢神経系へ及ぼす影響の解析を行うことも可能です。
また、宇宙飛行士への影響評価を並行して実施することで、宇宙飛行士とマウスとの相互評価も可能となります。
更に、宇宙環境による遺伝子の働き方の制御が、次世代(仔の世代)へ引き継がれるかなど、人類が長期的な重力環境変化にどうのように適応していけるかについても解析予定です。

加齢加速環境のプラットフォーム

宇宙滞在で観察される身体の変化は、地上で高齢者に見られる変化が加速されたものと似ています。
十分に運動できない場合、骨密度の減少は骨粗しょう症の患者さんの約10倍、1日のふくらはぎの筋肉の減少は寝たきりの方の2日分、高齢者の約半年分という速さで進行します。
最近、骨や筋肉など運動器が衰えるロコモティブ症候群の増加が大きな問題になっています。「きぼう」では 今後、マウスを使った実験などによって、加齢に伴う疾患等を早期に診断することが可能な因子の特定や、 予防薬・治療薬候補の薬効や安全性を調べる前臨床試験などの実施も検討していく予定です。
それらによる成果が、ロコモティブ症候群の予防や改善を通じて、健康寿命を延ばすことが期待されています。

ヒトではできない条件の統一、厳密な比較、組織解析等が可能

育てる環境や遺伝子などの実験条件を統一する、宇宙で人工重力をつくり出して重力影響の厳密な比較をする、組織・器官などを用いて詳細に解析するーーーこのような研究は、宇宙飛行士ではできません。
マウスを使って得られるデータと宇宙飛行士のデータでお互いに補完しあうことで、より大きな成果が得られます。

地上で得られないデータ取得が可能

宇宙での実験にはこんな特徴があります。
(1) 加齢で見られる現象が、時間軸で約10~30倍の早回しで見られます。健康管理の観点から宇宙で毎日運動する宇宙飛行士と比べ、宇宙で運動しないように設定できるモデル生物では、変化幅(スケール)で約15~20倍まで拡大して観察が可能です。
(2) 同じ個体(マウス)の中で、環境(重力)だけが変化するのに応じた経時的な変化を測ることができます。
地球帰還後には、加齢様症状が進んだ状態から回復する過程も観察できます。
(3) 遺伝子を改変したり、身体の一部を動かさないようにするといった不自然な状態をつくることなく、全身での影響を確認できます。これらの特徴を活かせば、地上では見られない新たな現象を発見できます。
その結果から、加齢や環境に起因した病気に関する遺伝子を見つけられるかもしれません。

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骨量減少(宇宙での骨密度の減少:Vico, Lancet 2003(ヒト), LeBlanc, J MusSkelet Neuro2007(ヒト), Morey-Holton, J App Physiol 2000(ラット), Chatani, Scientific Reports 2015(メダカ), 他)

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筋委縮(宇宙での筋断面積の減少:Fitts, J Physiol2010 (ヒト), Nikawa, FASEB 2004 (ラット), Harriso, J App Physiol2003 (マウス), Sandona, PLoSONE 2012 (マウス), Sung, J MusSkeletNeuro 2013 (マウス), 他)

プロジェクトの流れ

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未来へとつながるマウス飼育装置を使った研究

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〔現在の研究〕マウスを用いた宇宙環境応答の網羅的評価/筑波大学

宇宙環境における遺伝子発現の増減やDNAの化学的な変化、次世代への影響を調べることで、宇宙環境に対する生物応答変化の要因やメカニズムを解明します。

効果: ヒトへの適用や還元を進めやすいマウスの宇宙長期飼育による基礎データと知見の獲得を通じて、様々な病気に似た状態のマウスを用いた宇宙での創薬研究や、骨量減少・筋萎縮の発生機序解明による高齢化対策、地上の様々な環境適応研究などへも貢献します。

〔現在の研究〕腸内環境の統合評価/理化学研究所

宇宙環境による免疫能変化を評価します。宇宙飛行士の健康管理に役立つ基礎的知見を得ます。

効果: 高齢者などの免疫応答評価や予防医学へ還元します。
加齢現象に類似した骨量や筋力、免疫の低下などが見られる宇宙環境を活用した、生理的応答の評価方法の探索、免疫能メカニズムの解明、機能性食品等によるリスク軽減策の開発は、高齢者など一般人の健康増進や疾病等に対する予防医学へも貢献します。

ミッション概要(PDF:410KB)

小動物飼育装置(Mouse Habitat Unit: MHU)

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