2023-01-24 京都大学
近い将来、九州地方から関東地方にかけての太平洋側で、マグニチュード(M)8.0を超える巨大地震「南海トラフ地震」が発生することが懸念されています。確度の高い地震の発生予測は困難なものの、平時より地震が発生しやすい状態となったと判断された場合、気象庁より「南海トラフ地震臨時情報」が発表される仕組みも始まりました。
臨時情報発表時には、具体的にどの程度地震の発生確率が高まったのかまでは発表されませんが、そのような確率の目安を把握しておくことは、防災対応を考えるうえで重要です。そのため、西川友章 防災研究所助教、福島洋 東北大学准教授、加納靖之 東京大学准教授からなる研究チームは、想定震源域全域の半分程度を破壊するような巨大地震が発生した後、もう一つの巨大地震(後発地震)が続いて発生する確率を、世界の地震統計データおよび過去の南海トラフ地震発生履歴に基づいて、経過時間ごとに算出しました。その結果、例えば1週間以内に後発地震が発生する確率は、それぞれ約2%~77%(平時の約100~3,600倍)となりました。本研究は、後発地震の発生確率には大きな不確実性が伴うことを定量的に示すとともに、南海トラフ地域は世界の他地域と比べて巨大地震の連続発生確率が大きい可能性があることを示しました。
本研究成果は、2023年1月10日に、「Scientific Reports誌」に掲載されました。
南海トラフ地震想定震源域(薄橙)、昭和東南海地震・昭和南海地震の主要震源域(橙)。太矢印がフィリピン海プレートの進行方向を表す。
研究者のコメント
「南海トラフ地震臨時情報では、続発する巨大地震に対する警戒情報を発表しますが、具体的にどれほど地震発生確率が高まるのか評価したことはありませんでした。そこで、本研究では、続発する巨大地震の発生確率とその不確かさの評価を初めて行いました。本研究の評価が、南海トラフ地震の防災・減災に役立つことを期待します。」(西川友章)
研究者情報
研究者名:西川 友章
メディア掲載情報
京都新聞(1月11日 26面)、毎日新聞(1月11日 21面)、産経新聞(1月11日 2面)、日本経済新聞(1月11日 38面)および日刊工業新聞(1月11日 21面)に掲載されました。