衛星銀河観測で見えてきた、天の川銀河の普遍性と特異性

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2022-08-30 国立天文台

すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラを用いて、我々の住む天の川銀河と同程度の質量の銀河9つの周囲を撮像した結果、93 個もの衛星銀河の候補天体が発見されました。これらの衛星銀河の個数や配置を天の川銀河の衛星銀河と比較することにより、天の川銀河の普遍性と特異性があぶり出されてきました。将来的には、宇宙論モデルの検証にも影響を与える研究成果です。

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図1:観測された9つの銀河のうちの1つ (NGC3338)。約 7600 万光年先の渦巻銀河で、天の川銀河と同じくらいの重さと考えられています。高解像度画像はこちら (4.5 MB)。(クレジット:国立天文台)


天の川銀河のような大きな銀河の周囲には小さな「衛星銀河」がいます。天の川の衛星銀河は現在までに 50 個以上検出されていますが、その数は理論的な予想よりも一桁以上少なく、またその空間分布は等方的ではなく偏りがあります。これらの問題は、現在広く支持されている標準的な宇宙論モデルの「ほつれ」の一つと見なされていて、理論と観測のギャップを埋めるべく、精力的な研究がなされています。一方、衛星銀河の問題が普遍的なものなのか、それとも天の川銀河に特有の問題なのかは明らかになっていません。宇宙の普遍的な理解を深めるには、天の川以外の銀河にも目を向けて衛星銀河をたくさん調べることが重要です。
国立天文台の研究者が主導する研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム, HSC) を使って、約5~8千万光年離れた、天の川と同程度の質量を持つ9つの銀河について、衛星銀河が分布する領域をくまなく撮影しました (図1)。HSC が撮影した高感度画像には無数の銀河が映り込みますが、それら銀河の画像を詳細に解析して衛星銀河と背景の銀河を区別することで、暗く小さな衛星銀河の候補を 93 天体検出することに成功しました (図2)。

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衛星銀河観測で見えてきた、天の川銀河の普遍性と特異性 図2

図2:検出された衛星銀河の一部。多くの衛星銀河は淡く広がっています。高解像度画像はこちら (6.6 MB)。(クレジット:国立天文台)


比較の結果、銀河ごとの衛星銀河数には大きなばらつきがありますが、天の川の衛星銀河の数と同程度であり、天の川が衛星銀河の特段少ない銀河ではないことがわかりました。一方、親銀河から見た衛星銀河の配置を調べたところ、どの方向にも同程度の衛星銀河が存在する等方的な配置の兆候を示していました。天の川の衛星銀河の多くは同一平面上に偏って分布していて、その配置の特異性が浮き彫りにされる結果となりました。この結果は、実は天の川が宇宙の中で典型的な銀河ではないことを示しているのかもしれません。
研究をリードした国立天文台 特任研究員 (当時。現・東京大学 学術振興会特別研究員) の梨本真志さんは「HSC が誇る広視野・高感度の特性を生かすことで、発見されずにいた淡い衛星銀河の美しい姿を一度に捉えることができました。新たに検出された近傍銀河の衛星銀河は、衛星銀河に関する諸問題を統計的に検証するために貴重な情報です。一方、今回の観測では衛星銀河かどうかはっきりしない天体もあり、今後すばる望遠鏡の超広視野多天体分光器 (PFS) による追観測によって同定していくことが期待されます」と述べています。
最も観測が進む天の川銀河は宇宙論モデルの比較対象としてよく採用されるため、天の川が標準的な銀河であることの正否は宇宙論モデルの根幹に関わる問題と言えます。さらなる観測によって天の川以外の衛星銀河の3次元分布の精査と観測例の蓄積が進めば、衛星銀河の普遍的な性質が明らかとなり、宇宙論モデルと観測結果をより公平に比較できるようになるでしょう。
本研究成果は、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2022年8月29日付けで掲載されました (Nashimoto et al. “The Missing Satellite Problem outside of the Local Group. II. Statistical Properties of Satellites of Milky Way-like Galaxies“)。

すばる望遠鏡について
すばる望遠鏡は自然科学研究機構国立天文台が運用する大型光学赤外線望遠鏡で、文部科学省・大規模学術フロンティア促進事業の支援を受けています。すばる望遠鏡が設置されているマウナケアは、貴重な自然環境であるとともにハワイの文化・歴史において大切な場所であり、私たちはマウナケアから宇宙を探究する機会を得られていることに深く感謝します

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