ドローン・AIによるスマート植生評価法の開発~イネ科牧草との混播草地におけるマメ科牧草割合をAIが推定~

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2022-06-16 農研機構

ポイント

農研機構は株式会社バンダイナムコ研究所と共同で、ドローンと人工知能 (AI) を用いて、イネ科牧草1)とマメ科牧草2)が混播された牧草地におけるマメ科牧草の被度3)を簡便に推定できる手法を開発しました。本成果によって、手作業で行う画像解析の約1/5,000の時間で、マメ科牧草割合を高精度かつ効率的に評価できるので、マメ科牧草の密度に合わせた施肥や不足するマメ科牧草の追加播種といった精密な草地管理が可能になります。また、混播に適したマメ科牧草の品種開発への利用も期待されます。

概要


放牧や採草を行う牧草地では、飼料の生産性や品質の向上を目的としてイネ科牧草とマメ科牧草の混播栽培が広く行われており、そのメリットを最大限に引き出すためには飼料中のマメ科牧草を適正な割合 (約30%) に維持することが必要です。

農研機構と株式会社バンダイナムコ研究所は、ドローンを用いてイネ科牧草・マメ科牧草が混播された草地を撮影し、人工知能 (AI) のモデルにより空撮画像上のマメ科牧草の被度を推定する植生評価法を共同開発しました。空撮画像で1m2の牧草地におけるマメ科牧草を人手によって判別し被度を推定するには、3時間以上かかりますが、AIモデルを用いることで、同様の精度で、高速 (約2.5秒) かつ自動的に被度の推定を実施することができます。

本成果によって草地のマメ科牧草割合が簡易に把握でき、局所的な施肥、追加の播種などの精密な草地管理が可能になると考えられます。また、マメ科牧草は、生育が旺盛すぎるとイネ科牧草の生育を抑制し、弱いと逆に抑制されます。混播草地における構成割合はマメ科牧草の品種育成における重要な評価項目であり、本成果は品種育成の高精度化・効率化への貢献も期待されます。

ドローン・AIを活用した草地管理によって牧草の多収・高品質生産を実現し、SDGsの目標「飢餓をゼロに」の達成に貢献するとともに、持続可能な社会の実現を目指します。

関連情報

予算 : 運営費交付金、科学研究費補助金 基盤研究(C)「21K05551」

問い合わせ先など

研究推進責任者 :
農研機構北海道農業研究センター 所長 奈良部 孝
株式会社バンダイナムコ研究所 代表取締役 中谷 始

研究担当者 :
農研機構北海道農業研究センター 寒地酪農研究領域
研究員 藤原 崚、上級研究員 秋山 征夫

広報担当者 :
農研機構北海道農業研究センター 広報チーム長 花井 智也
株式会社バンダイナムコ研究所 コーポレート室 馬場 美希

詳細情報

開発の社会的背景

北海道内の牧草地では、イネ科牧草とマメ科牧草の種子を混ぜて播種する混播栽培が一般的に行われています。イネ科牧草だけでは不足するタンパク質やミネラルといった良質な牛乳の生産に必要な成分を、マメ科牧草により補うことができるためです。また、マメ科牧草の根に共生する根粒菌は土壌に窒素を与えるので窒素施肥量を減らすことが可能になり、マメ科牧草だけではなくイネ科牧草の生育を助けます。これらの効果を最大限引き出すためには、混播草地におけるマメ科牧草の比率を把握し、適正な割合 (約30%) に維持する必要があります。

研究の経緯

通常、マメ科牧草割合は、重さをはかる収量調査か、専門家の目視により評価されています。収量調査は、牧草を分けて重さをはかる非常に手間のかかる作業のため、狭い範囲の試験圃場に限定されます。そこで、広い草地に対して専門家以外でも実施できる客観的な評価法として、混播草地を上からドローンで撮影し、空撮画像上でマメ科牧草の占める領域を人手で判定し塗り分けて、その面積を算出するという方法が考えられます (図1) 。しかし、この方法では多くの労力がかかり、そのまま実用化することは困難でした。そこで、人が塗り分けて面積を算出する作業を人工知能 (AI) にまかせることを考えました。このドローンとAIの組み合わせは、新しい評価技術 (図2) の開発に大きな威力を発揮しました。

研究の内容・意義
学習したAIモデルによってマメ科牧草の被度を推定できました

はじめに、ドローンを用いてイネ科牧草・マメ科牧草の混播試験草地を真上から撮影します。この空撮画像に対して、マメ科牧草の領域について人手で塗り分けた画像を作成し、AIモデル学習のためのデータセットを作成します (図1) 。このデータセットに基づいてニューラルネットワーク4)のモデル (GoogLeNet) を学習させることで、空撮画像の断片のマメ科牧草被度を推定するAIモデルを作成しました。作成したAIモデルを用いて、別の空撮画像に対して推定を行うと、マメ科牧草が多い、または少ない箇所を認識し、被度とその分布状況を推定することができました (図2) 。

高精度かつ効率的なマメ科牧草割合の評価が可能です

作成したAIモデルを用いて複数の検証用画像に対して推定を行い、画像全体のマメ科牧草被度の推定結果を算出したところ、人手で精密に塗り分けて得られたマメ科牧草被度と高い相関がありました (図3) 。マメ科領域を人手で塗り分けると1m2あたり3時間以上かかりますが、AIモデルを用いると自動的に約2.5秒で被度の算出を完了することができました。本成果によるAIモデルを用いることで、高精度かつ効率的なマメ科牧草被度の評価ができるようになりました。

今後の予定・期待

AIによるマメ科牧草割合の評価は、草地管理への応用が期待されます。混播草地の窒素施肥量はマメ科牧草の比率によって決定されますが、これまでは草地内の牧草種の分布を考慮せずに全面同じ量を散布するか、散布量を変える場合は作業者の感覚に任されていました。本成果の利用によって、マメ科牧草の分布に合わせて精密な施肥を行うことができ、草地の生産力向上・肥料の削減が可能になります。また、混播草地ではマメ科牧草をはじめとする優良牧草種が減少すると草地更新が行われていますが、これには高いコストがかかります。本成果のAIモデルは、本当に草地更新が必要かどうかの判断、さらに、マメ科牧草の少ない箇所へ重点的に追播を行う低コストな技術開発に貢献できると期待されます。

また、マメ科牧草の品種育成においては、イネ科牧草との適正な構成割合を維持できる特性 (混播適性) が重要な育種目標となっています。研究担当者のグループでは混播適性に優れたマメ科牧草の品種育成を行っていますが、AIによるマメ科牧草割合の評価法を利用することで、品種育成の高精度化・効率化も実現されると期待されます。

用語の解説
1)イネ科牧草
北海道内の牧草地ではチモシー、オーチャードグラスなどが使用されており、炭水化物や繊維分を多く含んでいます。本研究ではチモシーを材料として使用しました。
2)マメ科牧草
北海道内の牧草地ではアカクローバ、シロクローバなどが使用されており、タンパク質やミネラルが豊富です。本研究ではシロクローバを材料として使用しました。
3)被度
植物の群落を構成する各種類が地表面を占める割合を表します。本研究では、マメ科牧草が空撮画像上で占める面積 (ピクセル数) の割合をマメ科牧草の被度としています。
4)ニューラルネットワーク
生物の神経細胞の仕組みを模倣した数理モデルであり、機械学習のモデルとして画像認識や自然言語処理など様々な用途に利用されています。
発表論文

Fujiwara R, Nashida H, Fukushima M, Suzuki N, Sato H, Sanada Y and Akiyama Y (2022) Convolutional Neural Network Models Help Effectively Estimate Legume Coverage in Grass-Legume Mixed Swards. Front. Plant Sci. 12:763479.

参考図

図1 イネ科牧草・マメ科牧草混播草地の空撮画像 (左) と、マメ科牧草領域を人手で塗り分けた画像 (右)
図2 検証用画像に対するAI推定結果の例


図3 人手で塗り分けて求めたマメ科牧草被度と、AI推定によって求めたマメ科牧草被度の比較

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