千葉県で微生物発酵生産用の実証拠点を稼働開始~バイオ由来製品の商用生産を想定したスケールアップ検証などを実施~

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2022-05-24 新エネルギー・産業技術総合開発機構

NEDOの「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」の一環として、Green Earth Institute(株)は、バイオ生産プロセス実用化を促進させるための微生物発酵生産用の実証拠点(関東圏バイオファウンドリ拠点)を構築しています。

このたび、Green Earth Institute(株)は、微生物発酵生産(株)茂原分工場(千葉県茂原市)にある最大1500Lの発酵槽を備えた実証設備と、Green Earth研究所のサテライト研究施設(千葉県木更津市)を関東圏バイオファウンドリ拠点の一部として稼働しました。

関東圏バイオファウンドリ拠点では、企業や大学、研究機関などの利用者が開発した有用な生産候補株(スマートセル)の商用生産を想定したプロセス最適化やスケールアップ検証を行うとともに、人材育成プログラムを実施します。2026年度までに16件以上のバイオ由来化合物の実用化に向けた生産実証に取り組む予定です。

千葉県で微生物発酵生産用の実証拠点を稼働開始~バイオ由来製品の商用生産を想定したスケールアップ検証などを実施~
図1 関東圏バイオファウンドリ拠点の場所

1.概要

微生物や植物などの生物を用いた物質生産(バイオものづくり)は、微生物育種や発酵技術、遺伝子組み換え植物による物質生産技術などに強みを持つ日本が競争力を発揮できる分野である一方、今後の持続的な発展のためにはバイオとデジタルの融合を基盤とする環境・技術・人材の整備が求められており、政府のバイオ戦略の一つとして掲げられています。

NEDOは「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発※1」の一環として、2021年度から千葉県で企業・大学・研究機関が連携してバイオ生産を推進する拠点(関東圏バイオファウンドリ拠点)を形成する事業を開始※2しました。

本事業は政府が掲げるバイオ戦略2020※3に基づいて、スケールアップ検証や試作などの生産実証と、バイオものづくりに携わる人材を育成する事業であり、その実施者であるGreen Earth Institute株式会社(GEI)は、三井化学株式会社茂原分工場にある最大1500Lの発酵槽を備える実証設備と、Green Earth研究所のサテライト研究施設※4(千葉県木更津市)を、関東圏バイオファウンドリ拠点の一部として2022年5月16日から稼働しました。

図2 発酵槽の参考写真
図2 発酵槽(参考写真)

2.拠点の概要

関東圏バイオファウンドリ拠点では、下記の設備・機能を配備します。企業や大学、研究機関などの利用者が開発した有用な生産候補株(スマートセル)を用いた生産ターゲット化合物について商用生産を想定した生産プロセスの最適化やスケールアップ検証、拠点設備を活用した人材育成プログラムを実施します。

表 関東圏バイオファウンドリ拠点のプラットフォーム

建屋 使用目的 供用予定
Green Earth研究所サテライト研究施設 小規模実証実験の実施 2022年5月稼働開始
バイオファウンドリ研究所
(仮称)
既存の実証設備 5Lから最大1500Lの複数の発酵槽を活用したプロセス最適化およびスケールアップ実証
前処理糖化室 バイオマス残渣(ざんさ)などを前処理・糖化し、微生物発酵用の原料糖を製造 2022年度内(23年春)に新設建屋完成予定
技術開発室 高性能な数値流体解析(CFD)※5・スケールダウンモデルを用いた効率的なスケールアップシステムの開発
培養室 ・連続発酵システムなど生産性向上
・試製の前培養用発酵槽[(5L×3基、30L×2基)、8連ジャー]
試製室 ・スケールアップ実証および試験生産
・試製用300L、3000L発酵槽
精製室 低分子~中分子の生産物の精製・サンプル製造(設備制約から対応不可のものは外注を想定)
分析室 生産効率向上に必要な各種分析
ユーティリティ設備 ユーティリティ供給
3.今後の予定

本事業では2022年度後半に関東圏バイオファウンドリ拠点の設備を使用した人材育成プログラム(NEDO特別講座)の開講を予定しています。ここでは、高性能な数値流体解析(CFD)・スケールダウンモデルを用いた発酵生産プロセスの最適化や、スケールアップ手法の講義、商用発酵生産に近い規模の設備を用いた実習などのカリキュラムを準備しています。本拠点を使用したNEDO特別講座のカリキュラムについては、近日中にNEDOホームページで公開する予定です。

上記の表のとおり、来春には、三井化学(株)茂原分工場内に3000Lの発酵槽を備えるGEIの新設による「バイオファウンドリ研究所(仮称)」も完成する予定で、それに合わせて2022年度以降、段階的にバイオ生産実証を希望する企業や大学、研究機関などを募る予定です。その後、拠点での生産実証を順次拡大していき、グローバルバイオコミュニティ※6の中核としてバイオファイナリー分野のプラットフォーム構築を目指し、2026年度までに16件以上のバイオ由来化合物の事業化に向けた生産実証を実施する予定です。

【注釈】
※1 カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
  • 研究開発項目2:生産プロセスのバイオファウンドリ基盤技術開発
  • 事業概要: カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
  • 事業期間:2021年度から2026年度までの最大6年間。
※2 企業・大学・研究機関が連携してバイオ生産を推進する拠点(関東圏バイオファウンドリ拠点)を形成する事業を開始
NEDOニュースリリース 2021年8月23日「関東圏に微生物機能を活用したバイオ生産の実証拠点を形成」
関東圏に微生物機能を活用したバイオ生産の実証拠点を形成
※3 バイオ戦略2020
バイオ戦略は「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現すること」を目標に、持続可能性、循環型社会、健康(ウェルネス)をキーワードに産業界、大学、自治体などの参画も得て推進しているイノベーション戦略です。
参照:バイオ戦略タスクフォース 令和2年6月「バイオ戦略2020(基盤的施策)のポイント」
バイオ戦略2020(基盤的施策)のポイント参照:統合イノベーション戦略推進会議決定 令和2年6月26日「バイオ戦略 2020(基盤的施策)」
バイオ戦略 2020
※4 Green Earth研究所のサテライト研究施設
研究開発支援施設かずさインキュベーションセンター内に設置したGEIの研究施設です。
※5 数値流体解析(CFD)
CFDは、Computational Fluid Dynamicsの略称です。コンピューターシステムを用いて流体解析を行うことで、試作品を作ることなくさまざまな状況をシミュレーションできるのがCFDの大きな特徴です。
※6 グローバルバイオコミュニティ
バイオ戦略2020に掲げられた「世界最先端の研究開発機関が中核となり、バイオ生産システムなどの開発機能を有する機関や企業などの連携により、シーズを円滑に事業化でき、世界からバイオイノベーションハブの一つとして認知されるコミュニティ」のことです。2022年4月22日に、東京圏でGreater Tokyo Biocommunity、関西圏でバイオコミュニティ関西(BiocK)が認定されました。
4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 材料・ナノテクノロジー部 バイオエコノミー推進室 担当:薩摩、林(智)

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:鈴木、坂本、橋本、根本

0502有機化学製品
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