セルロースナノファイバーに生じた原子レベルの欠陥構造を発見~理想的なバイオポリマー材料の生産にむけて~

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2022-10-07 京都大学

木質資源は地球上で最も豊富なバイオマスであり、その固形分の約50%をセルロースが占めます。低炭素社会の実現に向けバイオマスの高度利用が急務であり、セルロースの利活用は重要です。近年注目の活用例としてセルロースナノファイバー(CNF)が挙げられます。CNFは、樹木の細胞壁(パルプ)を化学・機械処理によりナノレベルまで解きほぐして得られる繊維状の材料です。CNFは1)軽くて強い、2)熱しても膨張しない、3)絶縁性で誘電率が高い、などの優れた特性を兼ね備えています。これらの優れた特性から、CNFは低炭素社会における高機能材料として期待されています。しかし、CNFの社会実装はいまだ限定的です。その原因の一つに、CNF材料の性能が、CNF1本の優れた特性から期待される水準に達していない、という現状があります。一般にナノ材料の欠陥構造は、材料の強度の低下などにつながります。CNFにも折れ曲がりや裂け目などの欠陥構造が存在することが報告されていましたが、詳細はあまりわかっていませんでした。CNFの優れた特性を十分に活かすには、欠陥の詳しい構造や発生機構などの理解が不可欠です。

そこで、小林加代子 農学研究科助教らの研究グループは、試料を原子レベルの精度で観察可能な顕微鏡と、画像処理による解析を組み合わせることで、CNFの欠陥構造の精密な解析を試みました。その結果、CNF表面には原子レベルの「凹み」が多く存在していることを発見しました。この凹みは、CNF全長の少なくとも30~40%を占めていました。また、折れ曲がりの付近で発生している凹みは、その他の場所に生じている凹みよりも深く長い傾向があることも見出しました。これらの結果から、機械処理によってパルプがCNFへと解きほぐれる際にCNF表面からセルロース分子鎖が剥離し、CNFの折れ曲がりや切断につながるという、CNF欠陥構造の発生機構を提案しました。

本研究で提案したCNFの欠陥の発生機構は、欠陥のない理想的なCNFの生産の足掛かりとなる重要な知見です。またこの知見は、CNFだけでなく、キチンナノファイバーなどその他のバイオポリマーにも応用可能であり、様々なバイオマスに由来する高機能材料の社会実装に貢献できると言えます。

本研究成果は、2022年8月26日に、「Nanoscale Horizons」にオンライン掲載されました。

図:CNFの概要

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:小林 加代子

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