世界最高性能のスピントロニクス界面マルチフェロイク構造を実証 ~スピントロニクスデバイスの電圧情報書き込み技術へ新たな道~

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2022-05-20 大阪大学,東京工業大学,科学技術振興機構

ポイント
  • 強磁性体(磁石)と圧電体の接合構造(界面マルチフェロイク構造)において、スピントロニクス界面マルチフェロイク材料の世界最高性能を達成。
  • 電界印加による磁化方向の繰り返しスイッチングを実証。
  • 不揮発メモリーとして期待されるSTT-MRAMを含む全てのスピントロニクスデバイスにおける低消費電力磁化制御技術として期待される「新たな電圧情報書き込み技術」の可能性を提示。

大阪大学 大学院基礎工学研究科の藤井 竣平氏(当時 大学院博士前期課程)、宇佐見 喬政 特任研究員、浜屋 宏平 教授、同大学 大学院工学研究科の白土 優准 教授、東京工業大学 物質理工学院の合田 義弘 准教授らの共同研究グループは、スピントロニクスデバイスにおける新たな電圧情報書き込み技術のために、高性能なスピントロニクス界面マルチフェロイク構造を開発し、世界最高レベルの性能指標(磁気電気結合係数)を達成するとともに、電界印加による不揮発メモリー状態の繰り返しスイッチングを実証しました。

次世代の半導体不揮発メモリーとして注目されているSTT-MRAMなどのスピントロニクスメモリーデバイスは、情報書き込み時に電流を印加しているため、書き込み時のエネルギー消費電力が大きいことが課題となっています。そこで、低消費電力書き込み方式として、さまざまな電界印加方式の技術開発が進められています。中でも最近、強磁性体(磁石)と圧電体の2層から構成される界面マルチフェロイク構造を利用した電界印加方式が注目されています。これは、圧電歪みを強磁性体に伝播させることで、強磁性体の磁化方向を制御する手法です。

次世代のスピントロニクスデバイスにおける低消費電力情報書き込み技術への応用を目指すには、より小さな電圧で磁化方向を制御することができる界面マルチフェロイク材料の開発が重要であり、世界中で材料開発が行われています。界面マルチフェロイク材料の性能指標は、磁気電気結合係数と呼ばれています。この値が大きいほど、小さな電界で大きな磁化の変化が発現することを意味しており、実用化のためには10-5秒毎メートルを超えることが必要とされています。しかし、これまで強磁性体としてスピン偏極率の高い物質を用いた場合、磁気電気結合係数は10-5秒毎メートル未満にとどまっており、この壁を超えることは非常に困難でした。

本研究では、強磁性体として高いスピン偏極率を持つことで知られるCo系ホイスラー合金磁石の一種であるCoFeSiと、高い圧電性能を持つ圧電体の一種であるPb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)を組み合わせた新しい界面マルチフェロイク構造を高品質に作製し、実用化の壁として存在していた10-5秒毎メートル台の磁気電気結合係数を世界で初めて実証しました。さらに、電界印加による不揮発メモリー状態の繰り返しスイッチングを実証しました。近年IoT技術・AI技術がますます進展する中、半導体素子の消費電力が爆発的に増加することが予想されています。本成果は、不揮発メモリー素子として期待されるMRAMを含む全てのスピントロニクス素子における低消費電力な磁化方向制御技術として期待されるため、「新たな電圧情報書き込み技術」の可能性を提示するものです。

本研究成果の関連情報は、英国科学誌Nature系の専門誌「NPG Asia Materials」(オンライン:2022年5月20日)に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究 CREST[グラント番号 JPMJCR18J1] 研究領域「実験と理論・計算・データ科学を融合した材料開発の革新」(研究総括:細野 秀雄 東京工業大 栄誉教授/元素戦略研究センター長) 研究課題「界面マルチフェロイク材料の創製」(研究代表者:谷山 智康 名古屋大学 大学院理学研究科 教授)の支援を受けて行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Giant converse magnetoelectric effect in a multiferroic heterostructure with polycrystalline Co2FeSi”
DOI:10.1038/s41427-022-00389-1
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
浜屋 宏平(ハマヤ コウヘイ)
大阪大学 大学院基礎工学研究科 附属スピントロニクス学術連携研究教育センター 教授

合田 義弘(ゴウダ ヨシヒロ)
東京工業大学 物質理工学院 材料系 准教授

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
大阪大学 基礎工学研究科 庶務係
大阪大学 工学研究科 総務課 評価・広報係
東京工業大学 総務部 広報課
科学技術振興機構 広報課

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