機械学習・データサイエンスを用いて有機合成化学の難題である複雑な不斉触媒反応の迅速な最適化に成功

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2021-12-09 東京大学,北海道大学,理化学研究所

 


有機合成化学教室の 陳 虹宇 大学院生、三ツ沼 治信 特任助教、金井 求 教授らは、理化学研究所の 山口 滋 上級研究員、北海道大学の 清水 洋平 准教授と共同で、機械学習・データサイエンスを用いて有機合成化学の難題である複雑な不斉触媒反応の迅速な最適化に成功しました。本研究成果は、2021年12月7日付けでCell Reports Physical Scienceのオンライン速報版で公開されました。

雑誌:Cell Reports Physical Science
題目:Data-Driven Catalyst Optimization for Stereodivergent Asymmetric Synthesis by Iridium/Boron Hybrid Catalysis
著者:Hongyu Chen, Shigeru Yamaguchi*, Yuya Morita, Hiroyasu Nakao, Xiangning Zhai,
Yohei Shimizu, Harunobu Mitsunuma*, Motomu Kanai*
DOI番号:10.1016/j.xcrp.2021.100679
アブストラクトURL:https://doi.org/10.1016/j.xcrp.2021.100679

分子の構造をベースにその性質をより深く知るための人工知能・データ科学は、創薬をはじめとした分子科学研究のあり方を一変させつつあります。データ科学を活用して、有機合成化学の難題である複雑な不斉触媒反応の制御を実現できれば、有機合成・触媒化学研究に変革をもたらす可能性があります。
医薬品などの生物活性分子には複数の不斉炭素を持つものが多いですが、立体異性体の数は不斉炭素が増えるに従って累乗で増えて行きます。エナンチオマーやジアステレオマーなどの立体異性体は我々の体には別分子として認識されるので、特に医薬品では最も有効な立体異性体を純粋な形で選択的に供給することが求められます。さらに一歩進んで、それぞれの立体異性体をオンデマンドに狙って作り分けられれば、さまざまな用途に自在に対応して分子を供給することができるようになります。これを立体分岐型反応(Stereodivergent reaction)と言います。立体分岐型反応の開発は、今日の有機合成化学の難題の一つです。
当研究チームは、四級-三級連続不斉炭素を持つ生成物を与えるカルボン酸α位不斉アリル化反応において、四種類の立体異性体と二種類の位置異性体の合計六種類の反応経路から生じる全ての分子を、狙った通りに選択的に作り分ける立体分岐型ハイブリッド触媒系の開発に成功しました。基質と触媒の組み合わせによるスクリーニングで集めたわずか32反応を用いてデータ解析を行い、反応選択性の支配因子に関する情報を抽出・可視化しました。このデータセットをもとに人が不斉触媒をデザインし、AIと人の協創により、人間の直感に基づく試行錯誤のみでは困難であった立体分岐型反応を迅速に開発できました。実用的なデータ駆動科学により有機合成化学の難題である複雑な触媒反応が制御可能であることを示した本研究は、有機合成DX化による物質科学変革への道筋の一例を示したと言えます。

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