鉄系高温超伝導体で世界最高の超伝導電流を実現 ~強磁場発生用磁石応用へ前進~

ad

2021-10-22 名古屋大学,東京農工大学,九州大学,科学技術振興機構

東海国立大学機構 名古屋大学 大学院工学研究科の飯田 和昌 准教授、畑野 敬史 助教は、米国立強磁場研究所のタランティーニ キアラ 博士、東京農工大学の秦 東益 博士前期課程学生、内藤 方夫 シニアプロフェッサーおよび山本 明保 准教授、九州大学の郭 子萌 博士後期課程学生、高 紅叶 博士研究員、王 超 博士研究員、斉藤 光 准教授および波多 聰 教授との共同研究で、鉄系高温超伝導体のうち、最も実用化が期待されている物質である(Ba,K)FeAsで、数テスラという比較的大きな磁場中において世界最高レベルの超伝導電流を流すことに成功しました。

鉄系高温超伝導体は結晶粒界で粒界弱結合と呼ばれる問題を有し、結晶粒界をまたいで流れる超伝導電流が抑制されてしまいます。また高磁場中で大きな超伝導電流を流すためには、超伝導体内部に無数の欠陥を導入する必要があります。

今回、(Ba,K)FeAs薄膜を成長させる下地にフッ化カルシウムを選択し、成長温度を(Ba,K)FeAsの融点の半分以下にすることで、粒界弱結合の問題を回避しつつ、超伝導体内部に無数の小傾角粒界を導入することに成功しました。小傾角粒界は欠陥として働き、高磁場中における超伝導電流は鉄系高温超伝導体として世界最高の値を記録しました。本成果により、医療用MRIなどに用いられる強力な磁場発生用磁石への研究開発の加速化が期待されます。また今回の基礎研究成果をもとに、高性能な多結晶型鉄系高温超伝導材料の創製へと展開していきます。

本研究成果は、2021年10月22日(日本時間)付ネイチャー・パブリッシング・グループの学術誌「NPG Asia Materials」に掲載されます。

本研究は、2018年度から始まった科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST「超伝導インフォマティクスに基づく多結晶型超伝導材料・磁石の開発」(研究代表者:山本 明保、JPMJCR18J4)と文部科学省「ナノテクノロジープラットフォーム」の支援のもとで行われたものです。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Approaching the ultimate superconducting properties of (Ba,K)Fe2As2 by naturally formed low-angle grain boundary networks”
DOI:10.1038/s41427-021-00337-5
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
飯田 和昌(イイダ カズマサ)
東海国立大学機構 名古屋大学 大学院工学研究科 准教授

山本 明保(ヤマモト アキヤス)
東京農工大学 大学院工学研究院 准教授

波多 聰(ハタ サトシ)
九州大学 大学院総合理工学研究院 教授

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
東海国立大学機構 名古屋大学 管理部 総務課 広報室
東京農工大学 総務・経営企画部 企画課 広報係
九州大学 広報室
科学技術振興機構 広報課

ad

1700応用理学一般
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました