空から放射線量の分布を迅速・広範囲に測る

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緊急時における航空機モニタリング活用のための情報整備・技術開発

『原子力機構の研究開発成果2020-21』P.38

図2-16 航空機モニタリングの概要
機内に計測システムを搭載し、対地高度 300 m、飛行速度約160 km/h を基準として測定を行います。

図2-17 航空機モニタリング結果
(a)島根原子力発電所及び(b)浜岡原子力発電所周辺の自然放射線量を計測し、マッピングを行いました。

図2-18 リアルタイムに航空機モニタリングデータを共有する通信システム
(a)通信システムの概略図です。機内から衛星通信を介して、地上とモニタリングデータをリアルタイムで共有します。
(b)本システムを車両に搭載し、茨城県内を走行して通信試験を行いました。車両走行位置及び放射線計数率が丸い点及び数字で表示されます。丸い点の色は放射線計数率値により 6 段階で変わります。


原子力災害等の緊急時における有人ヘリコプター等の航空機を用いた放射線モニタリング(航空機モニタリング)の結果は、住民等に対する防護措置の実施判断や環境への放射線影響評価に活用されます。航空機モニタリングは迅速・広範囲に測定が可能であり(図 2-16)、比較的高線量率となっている場所や、森林・山間部等の人の立入り困難なエリアにおいても適用できます。このような利点から、東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故直後から航空機モニタリングが実施され、放射性核種の沈着状況が明らかとなりました。1F 事故から 9 年以上経過した現在も原子力災害に備え、緊急時モニタリングのツールとして本技術を活用するための基盤整備に取り組んでいます。

具体例として、全国の原子力関連施設周辺における自然放射線量や航空機モニタリングを実施する際の留意事項を整備しています。2018 年度には、中国電力島根原子力発電所及び中部電力浜岡原子力発電所から半径80 km 圏内において航空機モニタリングを実施し、自然放射線量のデータを取得しました(図 2-17)。また、島根原子力発電所周辺には空港の管制区や他機関の飛行訓練エリアがあり、各関係機関との事前調整が必要なこと、浜岡原子力発電所周辺には索道(ロープウェイ等の輸送設備)が多く、急峻な山間部では機体の上昇が遅れ、索道に接触する危険性があるため、索道の位置情報を事前に入手しておく必要があること等の留意事項を整備しました。以上のような情報を事前に整備し、緊急時における迅速な航空機モニタリングの実施及び放射性核種による環境への放射線影響評価に役立てていきます。

また、緊急時における航空機モニタリング結果の迅速な提供に資するため、リアルタイムに航空機モニタリングデータを共有できる通信システムの開発を行いました(図 2-18(a))。本システムは機内から衛星通信を介して地上にモニタリングデータを共有するもので、PC を用いて放射線計数率及び飛行位置をリアルタイムに電子地図上で閲覧できます。本システムを車両に搭載して茨城県内を走行し、通信試験を実施しました。放射線計数率及び車両の走行位置が途切れることなくリアルタイムに取得・表示ができ、本システムの機能を確認できました(図2-18(b))。今後、ヘリコプターに本システムを搭載した通信試験を実施するとともに、原子力災害時において、住民等に対する防護措置の実施判断をする際に、より活用しやすくすることを目的として、空間線量率へ自動的に換算して表示する機能の実装等に取り組んでいく予定です。

本研究は、原子力規制委員会原子力規制庁からの受託事業「平成 30 年度原子力施設等防災対策等委託費(航空機モニタリング運用技術の確立等)事業」の成果の一部です。(普天間 章)

●参考文献
普天間章ほか, 平成 30 年度緊急時対応技術適用のためのバックグラウンド航空機モニタリング(受託研究), JAEA-Technology 2019-017, 2019, 95p.

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