2019/6/7 アメリカ合衆国・国立標準技術研究所 (NIST)
(NIST Infrared Frequency Comb Measures Biological Signatures)
・ NIST が、全赤外帯域の光を高速測定して物質の生物、科学、物理特性を検出する、コンパクトなデスクトップ型光周波数コムを開発。
・ 同光コムは机上の約 60cm ほどのスペースに設置できるサイズで、疾病診断、製造で使用する化学物質の特定や、バイオマスエネルギーハーベスティング等のアプリケーションが期待できる。
・ 光の波長(色)を正確に測定する光コムは、多様な設計が可能で次世代原子時計開発やメタン検出等の環境分野での利用が見込まれているが、赤外光の直接的な生成と測定が困難であることが、生物学的アプリケーションの開発において後れを取っている原因の一つ。
・ 今回、同光コムにより、2 万個超の原子から構成されるタンパク質のモノクローナル抗体(バイオ医薬品産業で治療効果の確証に利用される)の分子指紋を検出して生物学的アプリケーションを実証。同抗体の 3 つのアミノバンドの特徴的な振動を検出し、過去の研究が示すとおり、同タンパク質の構造は化学基が平坦に結合したシート状であることを確認した。・ 分子は中赤外光領域の周波数で回転・振動するため、同光領域は有用な研究用プローブであるた、広周波数帯域の光源や調整可能な光源、可視光・近赤外光用のような効率的な検出器がこれまでなかったため、同光領域でのプローブが困難とされてきた。
・ これらの課題に対処した同新光コムでは、シンプルなファイバーレーザーが、分子の特定に利用できる全赤外線領域(3~27 マイクロメートル(約 10~100THz の周波数)の中赤外から遠赤外光の波長)の光を発生させる。
・ 同光コムシステムの革新性は、近赤外光領域で作動するフォトダイオード(光検出器)により、吸収した光の電場を検出することにある。赤外検出を安価な情報通信用フォトダイオードが使用できる近赤外にシフトできること、また、赤外検出器での液体窒素による極低温冷却が不要になること、という 2 つの利点を提供する。
・ 生物学的アプリケーションの他に、分子の振動や回転にデータを記憶させる量子コンピューティング技術に向けた、赤外光と凝縮物質間の相互作用の検出や、新しい撮像技術と組わせることで、現在では大型のシンクロトロン施設の使用が必要なサンプルのナノスケール画像をデスクトップシステムで得ることも可能となる。
・ 本研究には、米国防高等研究計画局(DARPA)、全米研究評議会(NRC)および米空軍科学研究局 (AFOSR)が資金を提供した。
URL: https://www.nist.gov/news-events/news/2019/06/nist-infrared-frequency-combmeasures-biological-signatures
(関連情報)
Science Advances 掲載論文(フルテキスト)
Infrared electric field sampled frequency comb spectroscopy
URL: https://advances.sciencemag.org/content/5/6/eaaw8794
<NEDO海外技術情報より>