2019-06-11 JAXA
英国政府は、英国の南極地名委員会の提案を受け、南極半島の一連の氷河(氷流や氷丘)について、それらの氷河を観測し、極域科学研究に重要なデータを提供してきたヨーロッパ、アメリカ、日本の地球観測衛星にちなんだ名前を付けたことを発表しました(※1)。 氷河のひとつには、JAXAの陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の観測による貢献から、「Alos Ice Rumples」(ALOS氷丘)と命名されました(※2)。
今回、氷河の命名に付けられた地球観測衛星は、ヨーロッパのERS、ENVISAT、Cryosat、Sentinel、ドイツとアメリカの共同ミッションであるGRACE、アメリカのLandsatと日本のALOSです。
命名の対象となった氷河群は、近年、流速が加速していることが、これらの衛星による観測結果から明らかとなっており、地球気候の危機的な状況を象徴するものと注目を集めています。 今回の命名は、このような地球規模の科学的問題解決に向けて、宇宙における日米欧の国際協力を記念するものとして行われたもので、地球観測衛星データの重要性が増していることの証とも言えます。
「だいち」は国際極年(※3)に搭載された観測センサ(PALSAR、AVNIR-2、PRISM)を用いて、北極、南極を定期的(1年間に2~3回)に観測し、極域における氷の減少、時間的な変化を観測し、極域における氷の変化、土地被覆の変化状況などを把握することに貢献しました。
南極域の観測は「だいち」の後継機である「だいち2号」にも引き継がれており、引き続き極域環境変動の理解に貢献して行きます。(※4)
(※1)
英国南極地名委員会HP
Centre for Polar Observation and Modelling(CPOM)HP
図1:命名された氷河名(出典:A.E. Hogg/CPOM)
(※2)「Alos Ice Rumples」位置:南緯73度39分、西経75度56分
図2:「だいち」(ALOS)が観測した「Alos Ice Rumples」付近の様子(2007年1月4日観測)
(※3)国際極年(International Polar Year)は、2007年3月1日から2009年3月1日までの2年間にわたり北極と南極についての研究を60以上の国が参加して実施したもので、 特に、氷の変化がもたらす海面の変化や気候変動が極地に生息する動物へ与える影響等に焦点が当てられました。
PALSARを用いた北極圏、南極圏のモニタリングについて(International Polar Year)
(※4)
「だいち2号」による昭和基地近辺の海氷状況観測について
「だいち2号」による南極半島Larsen-C棚氷で発生した大規模な氷山分離の観測結果