多収の温暖地西部向け日本めん用小麦「びわほなみ」

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製粉性に優れ、もちもちとした滑らかなうどんが作れる

2019-03-05 農研機構

温暖地西部向けの日本めん用小麦品種「びわほなみ」は、従来品種「農林61号」や西日本の代表的小麦品種「シロガネコムギ」より多収です。「びわほなみ」の製粉性1)は、「農林61号」より高く、オーストラリア・スタンダード・ホワイト(ASW)2)と同程度以上に優れます。小麦粉はアミロース3)含量が21%程度と低く、もちもちとした食感の滑らかなうどんが作れます。

概要

温暖地西部の日本めん用小麦は、麺加工用として輸入されている小麦銘柄ASWに比べて製粉性が劣るため、その改善を製粉会社から求められています。特に、従来品種の「農林61号」は製粉性の評価が低く、これに替わる品種が強く求められています。

「びわほなみ」は、「農林61号」や「シロガネコムギ」に比べて収量が1割以上多く、子実の灰分4)がより低い品種です(小麦粉に含まれる灰分が少ないほど粉色はくすみが少なくなり、製粉性も上がります)。製粉歩留やミリングスコア5)が「農林61号」や「シロガネコムギ」より高く、ASWと同程度以上です。

小麦粉のアミロース含量が「農林61号」や「シロガネコムギ」より低く、ゆでめんはもちもちとした粘りのある食感で、滑らかさに優れます。

「びわほなみ」は、滋賀県の奨励品種に採用予定です。滋賀県では、2021年に3,000haが「農林61号」から「びわほなみ」に置き換わる予定です。多収で製粉性に優れる温暖地西部向けの日本めん用小麦として普及が期待されます。

関連情報

予算:運営費交付金および農林水産省委託プロジェクト「生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発」

品種登録出願 第32603号(平成29年11月22日出願、平成30年2月23日出願公表)

お問い合わせ

研究推進責任者

農研機構西日本農業研究センター 所長 水町 功子

研究担当者

同 水田作研究領域 麦類育種グループ 高田 兼則

広報担当者

同 企画部 産学連携室 広報チーム長 菅本 清春

 

詳細情報

開発の社会的背景・経緯

温暖地西部の日本めん用小麦は、オーストラリアから麺加工用として輸入されている小麦銘柄ASWに比べて製粉性が劣るため、その改善を製粉会社から求められています。特に、滋賀県では日本めん用小麦の主力品種となっている「農林61号」の製粉性の低さが製粉会社から指摘され、「農林61号」に替わる品種を求められていました。

新品種「びわほなみ」の特徴
  • 「びわほなみ」は早生で製粉性に優れる小麦品種「中国153号」と、多収で製粉性や製めん適性に優れる北海道の小麦品種「北見81号」(後の「きたほなみ」)との交配から育成されました。
  • 「農林61号」より成熟期が2日早い早生品種です。稈長が短く倒伏に強く、収量が多い品種です(表1、写真1)。穂発芽6)性は「農林61号」と同程度の”中”で、「シロガネコムギ」よりは強い評価です。欠点としては赤かび病7)に弱い点があげられます(表1)。
  • 灰分含量が「農林61号」や「シロガネコムギ」より低く、製粉歩留やミリングスコアが高く、製粉性はASW並に優れます(表1、表2)。
  • 「びわほなみ」の小麦粉はアミロース含量が「農林61号」より低く(表1)、ゆでめんは粘弾性(粘り)や滑らかさに優れ、製めん適性はASWと同程度です(表2)。
栽培上の留意点
  • 赤かび病に弱いため適期防除を徹底する必要があります。
  • 「農林61号」より原粒蛋白質含量が低い傾向にあるため、品質評価の基準値の原粒蛋白質含量を得られるように必要に応じて実肥を施用します。
品種の名前の由来

主産地となる滋賀県を代表する琵琶湖と小麦の穂が波打つほどに生育している様子が品種名に込められています。

今後の予定・期待

滋賀県で奨励品種に採用予定で、2017年播種から種子生産が開始されています。滋賀県では、2021年に3,000 haが「農林61号」から「びわほなみ」に置き換わる予定です。多収で製粉性に優れる温暖地西部向けの日本めん用小麦として普及が期待されます。

種子入手先に関するお問い合わせ先

農研機構西日本研究センター 企画部 産学連携室 産学連携チーム

利用許諾契約に関するお問い合わせ先

農研機構本部 知的財産部 知的財産課 種苗チーム

用語の解説

1) 製粉性:

  • 本来は製粉のし易さ全般を指す言葉ですが、ここでは一定量の小麦の粒から得られる粉の量を表す「製粉歩留」、灰分含量を加味した「ミリングスコア」を指しています。

2) オーストラリア・スタンダード・ホワイト(ASW):

  • オーストラリアから輸入されている日本めん(うどん)用の小麦銘柄。小麦粉の色や製粉性、製めん性に優れ、日本のうどんの主原料。白粒で、軟質小麦品種と硬質小麦品種のブレンドからなります。

3) アミロース:

  • でんぷんを構成する成分。でんぷんはアミロースとアミロペクチンからなり、アミロースが低いと粘りが増し、なくなると糯(もち)性になります。

4) 灰分:

  • 小麦粉に含まれている、リン、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄などのミネラルです。灰分量の少ない小麦粉は冴えたきれいな色をしていますが、多くなるにつれて、灰白色のくすんだ色になります。

5) ミリングスコア:

  • 製粉歩留が高くても得られた小麦粉の灰分含量が高ければ製粉性が高いとは言えないため、灰分含量を加味した製粉性の評価値。高い値の方が良いです。
  • ミリングスコア=100-{(80-製粉歩留)+50(ストレート粉灰分-0.30)}

6) 穂発芽:

    小麦の収穫時期に降雨が続いた場合に、種子が穂についたまま発芽する現象。程度が軽い場合でも種子中のアミラーゼ活性が高まることにより、でんぷんが分解されます。穂発芽した小麦は商品価値がなくなります。

7) 赤かび病:

  • 出穂期以降に湿潤な気象条件が続く場合に、フザリウム属菌が感染することによって発生します。収量の低下をもたらすほか、病原菌の産生するカビ毒、デオキシニバレノール(DON)の暫定基準値が決められています。
  • 麦の開花期に赤かび病菌が穂に感染することによって起こる病害です。収量や品質を低下させるだけでなく、人や家畜に対して有害なかび毒を生成するため、適正に防除する必要があります。
参考図

多収の温暖地西部向け日本めん用小麦「びわほなみ」warc-ken-20190301a2.pngwarc-ken-20190301a3.jpg

1202農芸化学
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