2018/09/19 JAXA はやぶさ2プロジェクト
「MINERVA-II (MIcro Nano Experimental Robot Vehicle for Asteroid [the Second Generation])」は初代「はやぶさ」に搭載された探査ローバ「MINERVA」の後継機です。
「はやぶさ2」の底面には「MINERVA-II1」および「MINERVA-II2」の2つのコンテナが搭載されていて、「II1」には2機、「II2」には1機のローバが格納されています(図1)。9月に分離がおこなわれるのは「MINERVA-II1」の方です(「MINERVA-II2」の分離は来年に予定されています)。
図1 「はやぶさ2」探査機の底面。(画像クレジット:JAXA)
「MINERVA-II1」の2機のローバ(Rover-1A, 1B)は直径18cm、高さ7cmの正十六角柱の形で、重量はともに約1.1kgです(図2)。開発はJAXA宇宙科学研究所で行われ、以下のメーカ・大学・団体からも協力をいただきました。
<協力メーカ、大学、団体など>
愛知工科大学、会津大学、アドニクス、アンテナ技研、エルナー、セシアテクノ、東京大学、東京電機大学、デジタルスパイス、日東光学、マクソンジャパン、DLR, ZARM
図2 小型ローバ「MINERVA-II1」。左がRover-1A, 右がRover-1B。奥はローバを格納するカバー。
(画像クレジット:JAXA)
Rover-1Aには4台、Rover-1Bには3台のカメラが搭載されていて、リュウグウ表面のステレオ画像を撮影する予定になっています。機体の縁からトゲのように飛び出している一部は温度センサで、リュウグウの表面温度を測定します。この他、光センサ、加速度計、ジャイロなどが搭載されています。
ローバは「はやぶさ2」に搭載されている中継器 (OME-E) を使って「はやぶさ2」と通信をおこないます。この通信速度は最大で32k bpsです。そして、「はやぶさ2」から地球へとデータが送られます。OME-Eは、10月に分離が予定されているドイツ・フランスの小型ローバ「MASCOT」の通信にも使われます。
MINERVA-II1の最大の特徴は、ホッピング機構によってリュウグウの表面を移動できる点です(図3)。機体の内部にモータが内蔵されていて、このモータを回転させると反動で機体そのものがホップする(飛び跳ねる)しくみになっています。これによってリュウグウの表面を移動し、複数の地点を探査することができます。リュウグウ上では、MINERVA-II1は自律的に動きます。つまり、自分自身で状況を判断しながら探査を行うことになります。
図3 リュウグウ表面の探査を行うMINERVA-II1のRover-1A(奥)およびRover-1B(手前)のイラスト。
(画像クレジット: JAXA)
リュウグウ表面の重力は非常に小さいため、通常の車輪やクローラなどでは、動き出した途端に機体が浮き上がってしまいます。そこで、こうしたホッピング機構で移動する方法が採用されました。1回のホップで空中に飛び上がってから着地するまでに最大15分間ほど滞空し、水平方向に最大15mほど移動できる見込みです。