超高精細な印刷はなぜできる?

ad
ad

銀ナノインクの不思議を解き明かす

2018/04/17 国立大学法人 山形大学 国立大学法人 東京大学 産総研

発表のポイント

  • 銀ナノ粒子の吸着性とインクの安定性が両立するメカニズムを明らかにした。
  • 銀ナノ粒子表面を保護するため、わずかに含まれる脂肪酸が巧みに機能していたことを新たに発見。
  • 新たな高機能ナノインク開発と高度印刷技術への展開が期待される。

発表概要

国立大学法人 東京大学【総長 五神 真】(以下「東大」という)大学院工学系研究科物理工学専攻 長谷川 達生 教授(兼)国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)フレキシブルエレクトロニクス研究センター【研究センター長 鎌田 俊英】総括研究主幹、荒井 俊人 講師らは、国立大学法人 山形大学【学長 小山 清人】(以下「山形大学」という)学術研究院 栗原 正人 教授、冨樫 貴成 助教と共同で、超微細回路を簡便・高速・大面積に印刷できるスーパーナップ法(注1)について、技術の鍵となる、銀ナノ粒子の吸着性とインクの安定性が両立する不思議なメカニズムを解明しました。

塗布や印刷によりフレキシブルな電子機器を製造するプリンテッドエレクトロニクス技術は、大規模・複雑化した従来のデバイス製造技術を格段に簡易化できる革新技術として期待されています。スーパーナップ法は、線幅1マイクロメートル以下の銀配線を簡易に印刷できる画期的な印刷技術として、現在、これにもとづく透明で曲げられるタッチパネルセンサの量産化が進められています。スーパーナップ法では、インク中に含まれた特殊な銀ナノ粒子が、基材表面に選択的に吸着する新たな仕組みが技術の鍵となっていますが、高活性な銀ナノ粒子を大量に含んだインクが、印刷に至る過程で安定なままたもたれる理由は不明でした。今回、インク中で銀ナノ粒子が凝集するメカニズムを詳しく検討した結果、銀ナノ粒子表面を保護するため、わずかに含まれている脂肪酸(注2)の分子鎖の挙動が、銀ナノ粒子の吸着性とインクの安定性を両立させるため、巧みに機能していることが明らかになりました。

本研究成果は英国科学誌Scientific Reportsに2018年4月17日(英国夏時間)掲載されます。

本研究は、国立研究開発法人 科学技術振興機構の戦略的イノベーション創出推進プログラム(S-イノベ)の研究開発テーマ「有機材料を基礎とした新規エレクトロニクス技術の開発」の研究課題「新しい高性能ポリマー半導体材料と印刷プロセスによるAM-TFTを基盤とするフレキシブルディスプレイの開発」から一部助成を受けています。

発表内容

①研究の背景

人間とコンピュータがより心地よく繋がった未来社会の実現に向けて、身体にフィットしたウエアラブルでフレキシブルなエレクトロニクスの開発が求められています。既存のシリコン技術が不得手とするこれらデバイスの実現には、常温・常圧付近の塗布や印刷により金属導配線や半導体を形成し、様々な電子回路を構築する、プリンテッドエレクトロニクス技術が有利になると期待されています。

電子回路を構成する基本となる金属導配線を印刷法で製造するには、インクとして、10~100ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)程度の粒径を持つ金属ナノ粒子を多量に含む、金属ナノインクの利用が適しています。現在までに、各種の金属ナノインクや印刷法の開発が進められてきましたが、なかでも一昨年開発されたスーパーナップ法は、基材表面に真空紫外光(注3)をパターン照射し、その表面を特殊な銀ナノインクで短時間濡らすだけで、基材に強く固着し、かつ線幅が1マイクロメートル以下の、高精細で高品質な銀配線を製造できることが明らかになっています。紙幣の高精細画の印刷などに用いられる既存の高精細印刷法と比べ、その精細度は二十倍以上にも達しています(図1)。このため用いられる銀ナノインク中には、活性の高い特殊な銀ナノ粒子が、40~60重量パーセントもの高い濃度で含まれています。この銀ナノインクが前述の基材表面に接すると、インク中の銀ナノ粒子がパターン表面上に素早くかつ選択的に化学吸着(注4)し、吸着した銀ナノ粒子どうしが常温で自己融着していくことで、銀配線の形成が進みます。しかし、このように活性の高い銀ナノ粒子を高濃度に含むインクが、印刷に至る過程では各粒子が高速にブラウン運動(注5)する状態を保持したまま、長期間(~数ケ月)にわたり凝集することなく安定に保たれる理由は不明でした。

タイトルとURLをコピーしました