分子量と末端構造を制御できるポリシロキサンの新しい合成法を開発

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高機能・高性能シリコーン材料開発の貢献に期待

2018年2月20日

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立研究開発法人産業技術総合研究所

 

NEDOと産業技術総合研究所は、新しい触媒反応により分子量と末端構造を制御できるポリシロキサンの新たな合成法を開発しました。開発した合成法は、シリコーンなどの有機ケイ素材料の物性を左右するポリシロキサンの分子構造を精密に制御しつつ、安全で簡便な操作で合成できる技術です。本研究成果は、より高機能・高性能なシリコーン材料の開発に貢献することが期待できます。

 

 

本研究成果の詳細は、2018年2月19日(現地時間)に英国の学術誌Chemical Scienceに掲載されました(DOI:10.1039/c7sc04234e)。

  • 環状トリシロキサンを原料として、安全・簡便に分子量(長さ)と末端構造が制御されたポリシロキサンを合成するイメージ図図1 ポリシロキサン化合物の分子量と末端構造を同時かつ簡便に制御できる新規合成法
1.概要

シリコーン※1や機能性シロキサン化合物※2などの有機ケイ素材料※3は、シャンプーや化粧品、キッチン用品、コンタクトレンズなどの生活に身近な製品から、低燃費エコタイヤやLED電球、太陽電池モジュールなどの高機能な製品まで、さまざまなところで使用されています。その特徴は、炭素系のポリマー材料より優れた耐熱性や耐寒性、耐光性、電気絶縁性、離型性、撥水性などの物性にあり、この特性を備えた有機ケイ素材料が、さまざまな製品の長期安定性に貢献しています。

有機ケイ素材料に要求される性能水準は年々高まっており、より高機能・高性能な有機ケイ素材料の開発が望まれています。例えば、電子機器の小型化やLED高輝度化に伴い、高熱や高強度の光に長期間耐える材料の開発が求められています。

有機ケイ素材料の物性は、その主構成要素であるポリシロキサン※4の分子構造が大きく影響します。ポリシロキサンはシロキサン結合※5(-Si-O-Si-)が数十個から千個以上連なって骨格を形成する高分子ですが、従来のポリシロキサンの合成法では、その分子構造を均一かつ精密に制御することが困難でした。既存の有機ケイ素材料の性能を超えるような材料を開発するためには、分子構造制御が重要です。

今回、NEDOと産業技術総合研究所は、「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」(2014~2021年度)において、シロキサン結合の形成について、これまでに得た知見に基づいて、従来法とは異なる方法論に基づく、新しいポリシロキサンの精密合成法を開発しました(図1)。

この合成法の開発によって、分子構造を精密に制御することで、分子量のばらつきが小さく、また対称形であるポリシロキサンを安全で簡便に、かつ大量に得られることが期待されます。さらに、これを原料として利用することで、エラストマー(ゴム)やゲル、分散剤や表面処理剤などの分野において、高機能・高性能なシリコーン材料の開発につなげることができると期待されます。

本研究成果の詳細は、2018年2月19日(現地時間)にRoyal Society of Chemistryが発行する英国の学術誌Chemical Scienceに掲載されました(DOI:10.1039/c7sc04234e)。

2.研究内容

従来の代表的なポリシロキサンの合成法は、クロロシラン※6の加水分解縮合重合法※7(図2従来法A)、または酸や塩基を用いた環状シロキサン※8の開環重合※9法(図2従来法B)ですが、これらは分子量のばらつきが大きなポリシロキサンしか合成することができませんでした。また、低分子量のシロキサン化合物も生成することがあるため、ポリマー化後にブリードアウト※10などが起こり、シリコーン製品の機能や外観を悪くするなどの品質トラブルにつながることが多くなっていました。

これを避けるため、シリコーン材料の創成期から現在までさまざまな改良が行われており、例えば有機リチウム化合物※11を重合開始剤として用いた環状トリシロキサン※12の開環重合により、分子量のばらつきが小さな直鎖状ポリシロキサン※13を得ることができています(図2従来法C)。しかし、この方法は自己発火性・禁水性※14のある有機リチウム化合物を用いており、原料や装置を完全に脱水乾燥させる必要があるため、操作が煩雑でした。さらに、ポリシロキサンのポリマー鎖の両末端へ、所望の構造を導入することは難しいものでした。

  • 三種類の従来法によるポリシロキサン合成のイメージ図図2 従来法によるポリシロキサンの合成

今回、ポリシロキサンの性能を次世代材料として求められる水準に到達させるための、より精密な構造制御を可能とする合成法を開発することに成功しました(図3、表1)。

  • 新規合成法の図解図3 今回開発したポリシロキサンの合成法(新規合成法)

表1

今回の研究開発では、環状トリシロキサンの開環重合において、有機リチウム化合物の代わりに水と高い塩基性を持つ有機化合物であるグアニジン※15触媒を用いることで、分子量のばらつきが小さく、ポリマー両末端に望みの構造を導入し、分子が対称である直鎖状ポリシロキサンを合成する方法を開発しました(図3上段)。

反応に用いるグアニジン触媒は、開環重合の反応機構を踏まえて、最適な分子構造を設計したものです。本法は有機リチウム化合物を用いた開環重合(図2 従来法C)と異なり、原料として水を使用できることから、脱水処理を施していない原料や合成装置を用いても反応を進めることができ、操作が簡便であるという利点を有しています。

また、この反応は環状トリシロキサン(図3(イ))に、適量の水、グアニジン触媒、最後に別な置換基を持つ環状トリシロキサン(図3(ロ))の順に加えていくことで、(イ)と(ロ)のブロック共重合体※16を得ることができるほか(図3中段)、最初から(イ)と(ロ)の2種の環状トリシロキサンに適量の水とグアニジン触媒を加えることで、(イ)と(ロ)がそれぞれ統計的な分布を持つ共重合体(統計的共重合体※17)を得ることができます(図3下段)。

さらに、環状トリシロキサンと水の量比に応じ、重合により得られるポリシロキサンの平均分子量を制御でき、最大で平均分子量10万以上(Si-Oの繰り返しが1350個以上)であるものを得ることもできます。また、重合反応の終わりにクロロシランを加えることで、両側の末端に様々な反応性の構造を有するポリシロキサンを合成することもできます。

今後は、これらバリエーションに富んだ分子量・末端構造制御ポリシロキサンを原料として活用し、高機能で高性能なシリコーン材料の開発に取り組みます。これにより、現行のシリコーン材料よりもさらに高耐熱性を発揮することや、細かい金型への充填性を向上させるための粘性調整といった高機能化が期待でき、例えば、高耐熱が要求される車載部品への適用や、高精度が要求される小型でも高輝度なLED照明部材への応用により、さらなる省エネルギー効果が期待されます。

【用語解説】
※1 シリコーン
シロキサン結合(-Si-O-Si-)を主骨格とし、ケイ素原子にさらにアルキル基、アリール基などの有機基が結合した高分子化合物の総称。重合度、有機基、高次構造などにより、オイル、グリース、ゴム、樹脂などの形態をとる。耐熱性が高く、撥水性、電気絶縁性、耐薬品性に優れるため、電気・電子、自動車、化粧品・トイレタリー、建築・土木などさまざまな産業分野で使用されている。シロキサン結合の用語解説については、※5を参照。
※2 シロキサン化合物
ロキサン結合を有する化合物の総称。構造中にケイ素-炭素結合(Si-C)を含み、また分子量が大きいものは、特にシリコーンとも呼ぶ。シロキサン結合の用語解説については、※5を参照。
※3 有機ケイ素材料
分子内にケイ素(Si)-炭素(C)結合を有するケイ素化合物、すなわち「有機ケイ素化合物」を用いた材料の総称。シリコーンもそのうちの一つ。
※4 ポリシロキサン
ケイ素(Si)と酸素(O)からなる化合物で、複数のシロキサン結合(-Si-O-Si-)の連結からなる化合物の総称。ケイ素原子に酸素原子が1つ結合したM単位、2つ結合したD単位、3つ結合したT単位、そして4つ結合したQ単位が様々な組み合わせで連結した直鎖状、分岐状、かご状、網目状などの骨格構造を持っている。図1、図2、表1に示した方法により合成することができる。シロキサン結合の用語解説については、※5を参照。

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