2018-02-13 国立遺伝学研究所 実験圃場・野々村研究室
EAT1 transcription factor, a non-cell-autonomous regulator of pollen production, activates meiotic small RNA biogenesis in rice anther tapetum.
Seijiro Ono, Hua Liu, Katsutoshi Tsuda, Eigo Fukai, Keisuke Tanaka, Takuji Sasaki, Ken-Ichi Nonomura.
PLOS Genetics, 14 (2), e1007238, (2018) DOI:10.1371/journal.pgen.1007238
小分子RNAは、遺伝子の転写や翻訳の抑制を介して、個体発生やウィルス防御などで重要な働きをします。私たちは今回、葯を構成するタペート組織で発現するイネEAT1転写因子が、減数分裂期特異的に24塩基長の小分子RNA生産を誘導することを発見しました(図1A, B)。EAT1は、小分子RNAの素材となる前駆体RNA、および前駆体を24塩基長に切断するDCL5酵素をコードする遺伝子の転写を直接活性化していたのです(図1C)。
また、小分子RNAの一部はタペート細胞に隣接する減数分裂細胞へと移動する可能性が、減数分裂細胞で発現するMEL1タンパク質の解析から明らかになりました(図1C)。小分子RNAが、植物の減数分裂細胞と周辺の体細胞の協調的な発生制御を取り持つ伝達役として機能する可能性を示唆する成果です。
本研究成果は、米国オンラインジャーナル「PLOS Genetics」に平成30年2月12日に掲載されました。
本研究は、遺伝研と包括連携協定を結ぶ東京農業大学、および新潟大学との共同研究の成果です。また、文科省科研費・新学術領域「植物新種誕生原理」(17H05849)、科研費・基盤研究(A) (25252004)、東京農業大学生物資源ゲノム解析センター生物資源ゲノム解析拠点事業、遺伝研共同研究 (NIG-JOINT 2015-61、2016-65、87A2017)、および遺伝研博士研究員制度による支援を受けました。
図1. EAT1転写因子は葯タペート組織で24塩基長の減数分裂small RNA (sRNA) の生合成を促進
(A) 葯 (anther) の断面図。タペート組織 (tapetum) は減数分裂細胞(PMC)と接する。(B) EAT1転写因子(緑)は減数分裂期 (meiosis) タペート細胞の核に蓄積するが、前減数分裂期 (premeiosis) では発現しない。スケールバー; 20µm。(C) EAT1はタペートでsRNA前駆体とDCL5遺伝子の転写を活性化する。前駆体RNAは切断・二本鎖化を経てDCL5により24塩基に切断される。PMCで発現するMEL1と24塩基長sRNAの結合から、sRNAの細胞間移動が示唆される。