2019/11/6 アメリカ合衆国・ロチェスター大学
・ ロチェスター大学が、ミズグモ(Argyroneta aquatic spider)やカミアリから着想を得て、浸水の繰り返しや損傷を受けても水に沈まない、高撥水性の金属構造体を開発。
・ 不沈の船、穴が開いても浮かび上がるウェアラブルな浮揚デバイス、海洋で長期間作動可能な電子モニタリングデバイス等につながる可能性が期待。
・ 同金属構造体は、フェムト秒レーザー光照射で複雑なミクロ・ナノスケールのパターンに金属表面を「エッチング」して作製。このパターンが空気を捕獲して金属表面に超撥水性を付与する。ただし、長期間の浸水では撥水性を損失。
・ このため、閉じた空間に空気を捕獲することで水中や水面で長期間生存するミズグモやカミアリの仕組みに着目。ミズグモは超撥水性の脚部と腹部間にダイビング・ベル(潜水鐘)と呼ばれるドーム型の巣をつくり、水面から取り込んだ空気をそこに溜める。同様に、カミアリも超撥水性の胴部に空気を捉えてラフト(いかだ)を形成する。
・ 大量の空気を捕獲するこのような多面的な超撥水(SH: superhydrophobic)表面の活用により、浮揚するデバイス作製を試みた。
・ SH 表面処理した並行する 2 枚のアルミニウムプレート面を互いに向き合わせて磨滅や損傷を回避する。向き合うプレートの表面間は、構造体の浮揚に必要な空気を捕獲するのに適した間隔が開いており、防水性のコンパートメント(仕切り)となる。
・ 同構造体は、2 か月間水中に押し付けて沈めた後、荷重を解放すると即座に水面に浮上した。また、数か所に穴を開けてもこの能力を保持。これは、穴の開いていない部分に閉じ込められた空気の働きによるもの。
・ 本研究ではアルミニウムを使用したが、同「エッチングプロセス」はあらゆる金属や材料に適用できる。最初の同エッチング技術実証では、1 インチ四方の表面の処理に 1 時間かかったが、7 倍強力なレーザーと高速スキャニングを使用することで商用アプリケーションへのスケールアップが可能な処理速度を達成した。
・ 本研究は、ビル&メリンダ・ゲーツ財団、米国陸軍研究所(ARL)、及び米国科学財団(NSF)より支援を得た。
URL: https://www.rochester.edu/newscenter/superhydrophobic-metal-wont-sink-406272/
(関連情報)
ACS Applied Materials & Interfaces 掲載論文(フルテキスト)
Highly Floatable Superhydrophobic Metallic Assembly for Aquatic Applications
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsami.9b15540#
<NEDO海外技術情報より>
Abstract
Water-repellent superhydrophobic (SH) surfaces promise a wide range of applications, from increased buoyancy to drag reduction, but their practical use is limited. This comes from the fact that an SH surface will start to lose its efficiency once it is forced into water or damaged by mechanical abrasion. Here, we circumvent these two most challenging obstacles and demonstrate a highly floatable multifaced SH metallic assembly inspired by the diving bell spiders and fire ant assemblies. We study and optimize, both theoretically and experimentally, the floating properties of the design. The assembly shows an unprecedented floating ability; it can float back to the surface even after being forced to submerge under water for months. More strikingly, the assembly maintains its floating ability even after severe damage and piercing in stark contrast to conventional watercrafts and aquatic devices. The potential use of the SH floating metallic assembly ranges from floating devices and electronic equipment protection to highly floatable ships and vessels.