国土地理院
GPSに加えて日本版GPS衛星「みちびき」のサービスが開始されるなど、誰でも簡単に数センチメートルの精度で位置を知ることができる社会(高精度測位社会)がすぐそこまで来ています。しかし、位置の精度が高くなればなるほど、地図上の位置とズレることになるかもしれません。どういうことでしょうか?
こうした社会が実現した少し未来の日常で、GPSやみちびきと地図を使いこなすための知られざる秘密について、動画でわかりやすく紹介します。高精度測位社会を十分に活用するために必要なものとは??!
動画の内容を少し詳しく解説します
地面は絶えず動き続けている
日本列島は4つのプレートの上にあり、それぞれのプレートは太古の昔から動き続けています。(図1)
このプレートの運動は、地震や火山噴火の原因になります。また、地震が起きていないときでも、1年間に数センチメートル程度地面は絶えず動いています※1。これを地殻変動と呼びます。
VLBIと呼ばれる測量技術(写真1)により、大陸間という大きなスケールの地殻変動を観測することができます。VLBIにより、日本とハワイは年間約6cm、10年間で約60cm近づいていることが分かっています。(図2、3)
このプレートの運動は、地震や火山噴火の原因になります。また、地震が起きていないときでも、1年間に数センチメートル程度地面は絶えず動いています※1。これを地殻変動と呼びます。
VLBIと呼ばれる測量技術(写真1)により、大陸間という大きなスケールの地殻変動を観測することができます。VLBIにより、日本とハワイは年間約6cm、10年間で約60cm近づいていることが分かっています。(図2、3)
こうしたプレート運動による地殻変動は、1997年以降で最大2メートル程度まで蓄積しています。
図1 日本列島周辺のプレートと地殻変動のイメージ 図2 大陸間の地殻変動
写真1 石岡測地観測局のVLBIアンテナ
図3 日本とハワイは近づいている※1 場所によって大きさは異なります。
位置の表し方には基準がある
○地図に描かれているのは過去のある時点の位置
プレート運動による地殻変動は、日本全国で絶えず生じており、全国の地図を絶えず修正するには、多くの費用と手間がかかります。
このため、地図の位置情報(緯度、経度、標高など)は、過去のある時点(基準日)の数値で表すことにしています※2。2011年東北地方太平洋沖地震の影響を大きく受けた東北と関東を中心とする地域は、地震後に位置を決め直した2011年5月24日が基準日です。それ以外の地域は、1997年1月1日を基準日としています。○GPSやみちびきは計測した時点の位置
一方、スマートフォンやカーナビなどでGPSやみちびきを使って得られる位置情報は、計測した今現在のものです。
図4 みちびき4機体制のイメージ (出典:内閣府)○GPSやみちびきによる位置が地図とズレてしまう
基準日の位置で描かれた地図上に、GPSやみちびきによる今現在の位置情報をそのまま重ねると、基準日から現在までの間にプレート運動による地殻変動が蓄積しているため、ズレてしまいます。みちびきなどを利用して得られる精度の高い位置情報を、より高度に、より便利に使おうとすればするほど、このズレが問題になります※3。
図5 GPSやみちびきによる位置と地図のズレ※2
たとえ新しい道路でも、地図上では、「1997年1月1日(2011年5月24日)時点ならばそこにあったであろう場所」に描きます。こうすることで、地図に描かれた他の地物との相対的な位置関係を正しく表現することができます。
※3
現在のスマートフォンやカーナビのGPSの精度は、10メートル程度といわれています。そのような粗い精度の位置情報は、おおよその現在位置を知る用途に使われるため、最大2メートル程度の地殻変動によるズレはほとんど問題になりません。一方、GPSやみちびきの測位補強サービスなどでは、位置情報の精度が1メートル程度から数センチメートル程度にまで高まります。また、地図の精度は、MMS(モービルマッピングシステム)などの新しい測量技術を用いると数十センチメートル程度になります。こうした高い精度の地図と位置情報を高度に組み合わせたさまざまなサービス(ドローン宅配や自動運転、農機や建機の自動制御など)の実現が期待されますが、高度に利用しようとすればするほど、地殻変動によるズレが問題になる可能性があります。
プレート運動による地殻変動は、日本全国で絶えず生じており、全国の地図を絶えず修正するには、多くの費用と手間がかかります。
このため、地図の位置情報(緯度、経度、標高など)は、過去のある時点(基準日)の数値で表すことにしています※2。2011年東北地方太平洋沖地震の影響を大きく受けた東北と関東を中心とする地域は、地震後に位置を決め直した2011年5月24日が基準日です。それ以外の地域は、1997年1月1日を基準日としています。○GPSやみちびきは計測した時点の位置
一方、スマートフォンやカーナビなどでGPSやみちびきを使って得られる位置情報は、計測した今現在のものです。
図4 みちびき4機体制のイメージ (出典:内閣府)○GPSやみちびきによる位置が地図とズレてしまう
基準日の位置で描かれた地図上に、GPSやみちびきによる今現在の位置情報をそのまま重ねると、基準日から現在までの間にプレート運動による地殻変動が蓄積しているため、ズレてしまいます。みちびきなどを利用して得られる精度の高い位置情報を、より高度に、より便利に使おうとすればするほど、このズレが問題になります※3。
図5 GPSやみちびきによる位置と地図のズレ※2
たとえ新しい道路でも、地図上では、「1997年1月1日(2011年5月24日)時点ならばそこにあったであろう場所」に描きます。こうすることで、地図に描かれた他の地物との相対的な位置関係を正しく表現することができます。
※3
現在のスマートフォンやカーナビのGPSの精度は、10メートル程度といわれています。そのような粗い精度の位置情報は、おおよその現在位置を知る用途に使われるため、最大2メートル程度の地殻変動によるズレはほとんど問題になりません。一方、GPSやみちびきの測位補強サービスなどでは、位置情報の精度が1メートル程度から数センチメートル程度にまで高まります。また、地図の精度は、MMS(モービルマッピングシステム)などの新しい測量技術を用いると数十センチメートル程度になります。こうした高い精度の地図と位置情報を高度に組み合わせたさまざまなサービス(ドローン宅配や自動運転、農機や建機の自動制御など)の実現が期待されますが、高度に利用しようとすればするほど、地殻変動によるズレが問題になる可能性があります。
矛盾なく使うためには補正が必要
既にある多くの地図と、GPSやみちびきによる高い精度の位置情報を重ね合わせて十分に活用するには、地殻変動によるズレを補正する必要があります。年間数センチメートルほどの地殻変動を日本全国で長期間、詳しく調べるために、国土地理院は「電子基準点」と呼ばれる観測装置を開発し、全国約1300か所に設置しています。(写真2)
電子基準点で把握した地殻変動の情報を利用することで、日本国内であればどの場所であっても、地図の基準日以降に蓄積した地殻変動によるズレを推定することができます。(図6)
このズレを補正量として使用することで、GPSやみちびきによる高い精度の位置情報を地図上で矛盾なく利用することができるようになります。(図7)
写真2 電子基準点(つくば1)
図6 地殻変動によるズレの補正方法
図7 地殻変動を補正
電子基準点で把握した地殻変動の情報を利用することで、日本国内であればどの場所であっても、地図の基準日以降に蓄積した地殻変動によるズレを推定することができます。(図6)
このズレを補正量として使用することで、GPSやみちびきによる高い精度の位置情報を地図上で矛盾なく利用することができるようになります。(図7)
写真2 電子基準点(つくば1)
図6 地殻変動によるズレの補正方法
図7 地殻変動を補正
誰もが安心して正確な位置情報を使える社会を支えるために
国土地理院では、2009年より、このプレート運動に伴う「地殻変動によるズレ」を補正する仕組みを「セミ・ダイナミック補正」と名づけ、測量分野に導入してきました。今後は、高精度測位社会の到来に向けて、みちびきなどを利用するサービスにおいても補正が可能となるような仕組みを整備・拡大し、誰もが安心して正確な位置情報を使える社会を支えていきます。
図8 高精度測位社会のイメージ
図8 高精度測位社会のイメージ
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