火力発電所から排出されたCO2を活用し、カーボンリサイクル技術の早期実用化を図る
2022-04-07 新エネルギー・産業技術総合開発機構
NEDOは「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発」の一環として、CO2を資源として有効利用するカーボンリサイクル技術の確立に向け、中国電力(株)大崎発電所内に実証研究拠点を整備しています。このたび本拠点の三つの研究エリアのうち基礎研究エリアで実施する研究開発テーマを6件採択しました。
NEDOは、同発電所内でCO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)など次世代火力発電の実証研究を実施中ですが、今回の取り組みでは、同発電所の排気ガスから分離・回収したCO2を利用し、化学品や燃料、鉱物を製造するカーボンリサイクル技術の開発を行います。さまざまなカーボンリサイクル技術の研究開発を効率的かつ集中的に進められる環境を整え、技術開発を促進することで、技術の早期実用化を目指します。
図1 中国電力(株)大崎発電所内に整備したカーボンリサイクル実証研究拠点
1.概要
CO2を資源として有効活用するカーボンリサイクル技術は、2021年6月に経済産業省などが策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略※1」において、カーボンニュートラル社会を実現するためのキーテクノロジーとして位置付けられました。また、2021年7月に改訂された「カーボンリサイクル技術ロードマップ※2」においても、同技術の確立に向けた技術開発をさらに加速することが記されました。加えて2019年9月に開催されたカーボンリサイクル産学官国際会議では、経済産業省によりカーボンリサイクル3Cイニシアティブが提唱され、CO2の分離・回収が行われている場所でのカーボンリサイクル実証研究拠点の整備を通じ、研究開発や実証研究を集中的に進めることが重要とされました。
これらの動向を踏まえ、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、大崎クールジェン株式会社とCO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)※3やCO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)※4など次世代火力発電の実証研究を行ってきた、中国電力株式会社大崎発電所内(広島県大崎上島町)にて、2020年8月よりカーボンリサイクル技術の実証研究拠点の整備※5に着手しました。本実証研究拠点は実証研究エリア、基礎研究エリア、藻類研究エリア※6の三つからなります。実証研究エリア、藻類研究エリアではすでに拠点の運営や研究活動を開始してきましたが、このたび基礎研究エリアの整備が進んだことから、カーボンリサイクル技術の基礎研究や先導研究の6テーマを採択しました。
図2 本拠点でのCO2有効利用と研究開発・実証事業の相関イメージ
革新的環境イノベーション戦略(経済産業省)を基にNEDO作成
2.事業の内容
- 事業名:
- カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2有効利用拠点における技術開発
- 事業期間:
- 2022年度~2024年度
- 事業総額:
- 約25億円(予定)
- 実施内容:
- 本事業ではCO2有効利用拠点における要素技術開発などを行い、さまざまなCO2有効利用技術を対象に経済性やCO2削減効果などを評価します。基礎研究エリアでは、CO2を有効利用した化学品や燃料、鉱物を製造するため、以下6件の研究開発に取り組みます。
3.採択テーマと委託予定先
採択テーマ名 | 委託予定先 |
---|---|
ダイヤモンド電極を用いた石炭火力排ガス中CO2からの基幹物質製造 | 学校法人慶應義塾 学校法人東京理科大学 一般財団法人石炭フロンティア機構 |
大気圧プラズマを利用する新規CO2分解・還元プロセスの研究開発 | 国立大学法人東海国立大学機構 川田工業株式会社 |
CO2の高効率利用が可能な藻類バイオマス生産と利用技術の開発 | 日本製鉄株式会社 |
CO2を炭素源とした産廃由来炭化ケイ素合成 | 国立大学法人東北大学 |
カーボンリサイクルLPG製造技術とプロセスの研究開発 | ENEOSグローブ株式会社 日本製鉄株式会社 国立大学法人富山大学 |
微細藻類によるCO2固定化と有用化学品生産に関する研究開発 | 株式会社アルガルバイオ 関西電力株式会社 |
【注釈】
- ※1 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
- 日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を、経済と環境の好循環につなげるための産業政策として、2021年6月18日に経済産業省が関係省庁と連携して「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。
- ※2 カーボンリサイクル技術ロードマップ
- (参考)経済産業省リリース(2021年7月26日)「『カーボンリサイクル技術ロードマップ』を改訂しました」
- ※3 CO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)
- IGCCはIntegrated Coal Gasification Combined Cycleの略です。石炭をガス化して、ガスタービンと蒸気タービンの2種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式のことです。
(参考)NEDOリリース(2019年12月26日)「 CO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電の実証試験を開始」 - ※4 CO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)
- IGFCはIntegrated Coal Gasification Fuel Cell Combined Cycleの略です。石炭をガス化して、燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンの3種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行う発電方式のことです。
(参考)NEDOリリース(2019年4月17日)「 世界初、石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証事業に着手」 - ※5 カーボンリサイクル技術の実証研究拠点の整備
- (参考)NEDOリリース(2020年8月5日)「 カーボンリサイクル技術における実証研究拠点化と技術開発に着手」
- ※6 藻類研究エリア
- (参考)NEDOリリース(2020年10月5日)「 バイオジェット燃料の普及を推進する研究開発6件を始動」
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 環境部 担当:戸島、齊藤、福原、吉田 TEL:044-520-5293
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:根本、坂本、橋本、鈴木