国立天文台が撮影した2022年11月8日の皆既月食と天王星食

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2022-11-10 国立天文台

皆既月食と天王星皆既月食と天王星。撮影時刻:20時37分。(写真は天の北極側が上。以下同じ)撮影:長山省吾。(クレジット:国立天文台)


2022年11月8日、皆既月食が起こりました。今回は、月食中に天王星食も起こる非常に珍しい皆既月食となりました。この珍しい皆既月食を全国にお届けしようと、国立天文台天文情報センターは、東京都にある三鷹キャンパスで月食と天王星食の撮影とライブ配信を行いました。当夜の三鷹キャンパスはほぼ快晴で、無事に撮影とライブ配信をやり遂げることができました。この記事では撮影の成果を中心に、国立天文台の今回の取り組みをご紹介します。

皆既食、部分食、天王星食の撮影

国立天文台天文情報センターでは、月食と天王星食の高品質な記録に成功しました。月食全体の撮影には口径12センチメートルの屈折望遠鏡を、天王星食をクローズアップした撮影には50センチ公開望遠鏡を使いました。まずは、それらの画像・映像をご紹介します。

はじめに19時16分に食の最大を迎えた皆既月食です。肉眼ではもう少し暗い印象でしたが、ディテールがわかるよう写真は少し明るめに撮りました。

食の最大を迎えた皆既月食食の最大を迎えた皆既月食。撮影時刻:19時59分。撮影:長山省吾。(クレジット:国立天文台)

部分食は明るい部分と地球の影の部分の輝度差が大きく、1枚撮影しただけでは人間の目に近い写真は得られません。そこで、露出の異なる5枚を撮影して後処理で1枚に合成し、筆者が双眼鏡でじっくり観察して記憶に留めた部分月食を再現してみました。個人的には今回お気に入りの一枚です。

皆既月食と天王星筆者が双眼鏡で見た印象を再現した部分月食。露出の異なる5枚をHDR合成。撮影時刻:21時15分。撮影:長山省吾。(クレジット:国立天文台)

次に、皆既月食と、天王星の潜入と出現の様子を3分弱にまとめたダイジェスト映像を紹介します。特に50センチ公開望遠鏡で得られた天王星の潜入と出現は必見で、今回のハイライトと言えるでしょう。

皆既月食と、天王星の潜入と出現の映像。撮影:萩野正興、佐藤幹哉、長山省吾。映像編集:三上真世。(クレジット:国立天文台)

三鷹キャンパスと国立天文台の各観測所を結んだライブ配信

三鷹キャンパスにある50センチ公開望遠鏡と口径10センチメートルの屈折望遠鏡の映像を中心に、国内外の国立天文台の観測所をつないだライブ配信では、各地の月食の模様をYouTubeとニコニコ生放送を通じてお届けしました。ボリューム満載で4時間余りにおよぶ長時間のライブ配信は、多くの方にご視聴いただきました。YouTubeの最大同時視聴数は11万強、配信後のアーカイブを含めた視聴回数は早くも200万回(11月10日16時現在)に達しようとしています。国立天文台では、今後も天体や星空のライブ配信を続けていきます。この機会に、国立天文台YouTubeのチャンネル登録をぜひお願いします。

すばる望遠鏡のあるハワイ島マウナケアの山頂からは、朝日新聞とハワイ観測所が「星空ライブカメラ」によるライブ配信を行いました。天文情報センターのライブ配信でもこの映像を使い、世界有数の天文観測好適地であるマウナケアの皆既月食の様子をお届けしました。星空ライブカメラの映像は常時YouTubeでライブ配信しているので、いつでもマウナケアの様子をお楽しみいただけます。

水沢VLBI観測所も「「天文学者」と見る皆既月食/天王星食」と題してYouTubeでのライブ配信を実施しました。水沢VLBI観測所と三鷹キャンパスの配信会場を音声でつなぎ、各地での盛り上がりを共有しました。

また、石垣島天文台で撮影された最新の画像も随時天文情報センターのライブ配信で紹介しました。離れた場所からの観察を比較できたことで、地域による天王星食の時刻の違いと月と天王星との視差を目の当たりにする良い機会になりました。

スマートフォンでの撮影

最後にスマートフォンでの写真を紹介します。今回筆者は、スマートフォン(iPhone 13 Pro)での撮影も試みました。近年のスマートフォンのカメラは高画質化が進んでいるため、三脚に固定すれば皆既月食もきれいに写せるのではと考えたからです。結果としては、記録用としては十分な写真が得られたと評価しています。三脚を使えば本格的なカメラがなくても、スマートフォン単体で気軽に皆既月食を撮れることがわかったのは収穫でした。機会があれば、気軽に皆既月食の撮影にチャレンジしていただきたいと思います。

皆既月食と天王星スマートフォン(iPhone 13 Pro)で撮影した皆既月食と50センチ公開望遠鏡。撮影:長山省吾。(クレジット:国立天文台)

このほかにも、この記事では紹介しきれなかった写真と映像を、国立天文台Flickrに掲載しています。こちらもぜひご覧ください。

次回、日本全国で見られる皆既月食は、2025年9月8日

次に日本全国で見られる皆既月食は、およそ3年後の2025年9月8日の午前2時30分から午前3時53分に起こります。深夜から早朝にかけての時間帯になるので、観察・撮影される方は寝不足にならないよう対策が必要になりそうですね。次の皆既月食もぜひお楽しみください。

文:長山省吾(国立天文台 天文情報センター)

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