電流中の”スピン”の制御により水電解の効率化を実現 ~水素エネルギーによる持続可能な社会へ大きく貢献~

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2022-05-02 京都大学,科学技術振興機構

京都大学 大学院工学研究科の須田 理行 准教授、辺 智芸 同博士課程学生、筒井 祐介 同助教、関 修平 同教授、加藤 研一 同助教、生越 友樹 同教授らの研究グループは、二硫化モリブデン(MoS)と呼ばれる層状化合物の層間にキラル分子を挿入した新奇な化合物である「キラルMoS」が、電流中のスピンの向きを同方向に揃える性質を持つことを明らかにしました。また、同化合物を水の電気分解(水電解)における電極材料として用いると、スピンの向きが揃った電流の効果によって、酸素発生効率が大きく向上することを見いだしました。

電流を担う電子の1つ1つは、スピンと呼ばれるミクロな磁石としての性質を持っていますが、通常はそれぞれのスピンの向きがバラバラなために磁石としての性質は全体として打ち消しあってしまい、電流中のこのミクロな性質が電気化学反応に利用されることはありませんでした。これまでは、電流中のスピンの向きを揃えるには、主としてレアメタルから構成される強力な磁石や電磁石といった大がかりな装置が必要とされてきました。一方、本研究では同化合物を電極上に塗布するだけで、電流中の約75パーセントものスピンの向きが同方向に揃い、酸素発生反応を効率化させることができることを明らかにしました。本成果は、水電解による水素生成技術を効率化する一助となり、持続可能な社会の実現に資する革新的反応制御技術となることが期待されます。

本成果は、2022年4月28日(現地時刻)にドイツの国際学術誌「Advanced Science」にオンライン掲載されました。

本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業さきがけ「電子やイオン等の能動的制御と反応」(研究総括:関根 泰、研究代表者:須田 理行、研究期間:平成31年10月~令和5年3月、JPMJPR19T5)、一部は日本学術振興会 科学研究費補助金 学術変革領域研究(A)20H05870、挑戦的研究(萌芽)21K18894、日立財団 倉田奨励金、旭硝子財団 研究助成、村田学術振興財団 研究助成(研究代表者:須田 理行)の支援を受けて行われました。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Hybrid Chiral MoS2 Layers for Spin-polarized Charge Transport and Spin-dependent Electrocatalytic Applications”
DOI:10.1002/advs.202201063
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
須田 理行(スダ マサユキ)
京都大学 大学院工学研究科 准教授

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
京都大学 総務部 広報課 国際広報室
科学技術振興機構 広報課

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