結晶の対称性を反映した新しい原理の超伝導整流現象を発見~エネルギー損失の極めて小さい電子回路の実現に向けた新たな可能性~

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2022-03-29 東京大学,科学技術振興機構,理化学研究所,東京工業大学,埼玉大学
結晶の対称性を反映した新しい原理の超伝導整流現象を発見~エネルギー損失の極めて小さい電子回路の実現に向けた新たな可能性~

ポイント
  • 空間反転対称性の破れた超伝導体において、磁場や磁性を必要としない新しい原理の整流特性を発見。
  • 整流特性が結晶構造を反映していることを実証するとともに、微視的機構を提案。
  • 本研究成果が、空間反転対称性の破れた超伝導体における新機能を開拓すると同時に、エネルギー損失の極めて小さい電子回路の実現へ向けた新たな知見となることに期待。

東京大学 大学院工学系研究科の板橋 勇輝 大学院生、同研究科 物理工学専攻の井手上 敏也 助教、岩佐 義宏 教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発デバイス研究チーム チームリーダー兼任)らの研究グループは、埼玉大学や東京工業大学のグループと共同で、空間反転対称性の破れた3回回転対称性を持つ層状超伝導体PbTaSe(鉛(Pb)、タンタル(Ta)、セレン(Se)から構成される単結晶)が、外部磁場や磁気秩序が存在しない条件下でも巨大な整流特性を示すことを発見した。

空間反転対称性の破れた結晶において実現する物質固有の整流特性は、1つの均質な物質中で生じるという点で、従来の半導体p-n接合における整流現象とは本質的に異なる。また、超伝導を始めとする特徴的な状態を示す物質へも応用が可能であるため、超伝導ダイオード効果などのユニークな機能を実現するための有力な原理となり得る。しかし、そのような物質固有の整流特性は、これまで外部磁場や磁気秩序が存在する時間反転対称性の破れた条件下で報告がなされており、時間反転対称性を持つ超伝導体における整流現象は未開拓であった。

本研究では、PbTaSeの常伝導状態(超伝導を示さない状態)および超伝導状態の両方において外部磁場を必要としない整流特性を初めて観測し、整流特性が結晶対称性を反映していることや超伝導状態において整流効果が常伝導状態と比べて大きく増大することを発見した。さらに、3回回転対称性を持った超伝導体中での超伝導ボルテックス-アンチボルテックスの運動を定式化することで、時間反転対称条件下での超伝導整流特性の新原理を提案した。

本研究成果は、空間反転対称性の破れた超伝導体における新規輸送現象の開拓を推進すると同時に、外部磁場を必要としない整流特性という新たな機能性実現への有用な知見になると期待される。

本研究成果は、2022年3月29日(英国夏時間)に英国科学雑誌「Nature Communications」にオンライン掲載される。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ研究領域「トポロジカル材料科学と革新的機能創出(課題番号:JPMJPR19L1)」、CREST研究領域「二次元機能性原子・分子薄膜の創製と利用に資する基盤技術の創出(課題番号:JPMJCR16F2)」、科研費「基盤研究S(課題番号:JP19H05602)」、「基盤研究B(課題番号:JP19H01819)」、公益財団法人 矢崎科学技術振興記念財団 奨励研究助成の支援により実施された。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Giant second harmonic transport under time-reversal symmetry in a trigonal superconductor”
DOI:10.1038/s41467-022-29314-4
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
井手上 敏也(イデウエ トシヤ)
東京大学 大学院工学系研究科 附属量子相エレクトロニクス研究センター 助教

岩佐 義宏(イワサ ヨシヒロ)
東京大学 大学院工学系研究科 附属量子相エレクトロニクス研究センター 教授
(理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発デバイス研究チーム チームリーダー)

笹川 崇男(ササガワ タカオ)
東京工業大学 科学技術創成研究院フロンティア材料研究所 准教授

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
科学技術振興機構 広報課
理化学研究所 広報室 報道担当
東京工業大学 総務部 広報課
埼玉大学 広報渉外室 広報係

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