2021-05-24 京都大学
牧野奏佳香 農学研究科博士課程学生、徳地直子 フィールド科学教育研究センター教授、駒井幸雄 大阪工業大学名誉教授、國松孝男 滋賀県立大学名誉教授の研究グループは、気候条件等に勾配のある近畿地方を対象に、森林渓流水の硝酸(NO3–)濃度を規定する環境要因を、機械学習を用いて初めて広域スケールで解明しました。
窒素(N)が生態系にとって過剰になると渓流からNが流れ出し、渓流水のNO3–濃度が高くなる傾向があります。これを窒素飽和現象といいます。このことは水資源の劣化というだけでなく、土壌の酸性化や生物多様性の低下を引き起こす可能性があります。そのため渓流水NO3–濃度を規定する要因の解明が望まれます。
本研究では大気からのN降下量だけでなく降水量や気温等の気候条件も重要であり、これらが一般的な規定要因であることが示されました。特に、雪の降り方の影響が示唆されました。つまり、生育期に森林に降下したNは生態系に取り込まれ、蓄積され、窒素飽和に至り、渓流に流出します。一方、多雪地域である日本海側では休眠期に降下したNの多くが積雪中に留まって生態系に取り込まれず、融雪期に一気に流出するため、窒素飽和に至りにくいと考えられました。これが、日本海側では近畿全体に比べてN降下量は多いにもかかわらず渓流水NO3–濃度は低くなった原因と解明されました。
本研究成果は、2021年5月20日に、国際学術誌「Hydrological Processes」のオンライン版に掲載されました。
図:近畿全体と日本海側(多雪地域)における森林渓流水のNO3–濃度形成のメカニズムの違い
研究者情報
研究者名:徳地直子