離れていてもつながった電子の軌道運動の実証 ~ワイル粒子による特異な非局所量子性を観測~

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2021-05-07 東京工業大学,科学技術振興機構,東京大学,理化学研究所

離れていてもつながった電子の軌道運動の実証 ~ワイル粒子による特異な非局所量子性を観測~

ポイント
  • ワイル粒子の存在により電子の軌道運動が2次元から3次元へと拡張できることが理論的に予測されてきたが、これまで観測できていなかった。
  • トポロジカル半金属のトランジスターデバイスを測定することで、空間的に離れた表面の電子状態がワイル粒子により結合し量子化された3次元運動を示すことを観測した。

空間的に離れた電子が相互作用し合う散逸のない伝導を利用することで、超低消費電力エレクトロニクスへの応用が期待される。東京工業大学 理学院物理学系の打田 正輝 准教授の研究グループは、東京大学 大学院工学系研究科の川﨑 雅司 教授の研究グループ、理化学研究所 創発物性科学研究センターの田口 康二郎 グループディレクターの研究グループと共同で、トポロジカル半金属と呼ばれるトポロジカル物質において、空間的に離れた表面と裏面の電子状態が結合し、量子化された3次元軌道運動として量子ホール効果を示すことを実証した。打田 正輝 准教授らは、独自の成膜技術で作製した高品質なトポロジカル半金属薄膜をもとにデュアルゲート型の電界効果トランジスターデバイスを作製し、量子ホール効果を観測することに成功した。系統的な電気抵抗測定により、3次元系における量子ホール効果の観測の背景には、空間的に離れた表面電子状態がワイル粒子によってつながったワイル軌道が存在することを実証した。今回の結果は、空間的に離れた表面状態がワイル粒子によって結合し、エネルギーを散逸しない形で電子の行き来が可能になることを示している。この特異な非局所性を持つ3次元量子化伝導は、新たな超低消費電力エレクトロニクスの応用アイデアにつながることが期待される。

本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に2021年5月6日(英国時間)に掲載された。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「薄膜技術を駆使したトポロジカル半金属の非散逸伝導機能の開拓」(JPMJPR18L2)、CREST「トポロジカル絶縁体ヘテロ接合による量子技術の基盤創成」(JPMJCR16F1)、日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(B)(JP18H01866)の支援を受けて行われた。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Intrinsic coupling between spatially-separated surface Fermi-arcs in Weyl orbit quantum Hall states”
DOI:10.1038/s41467-021-22904-8
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
打田 正輝(ウチダ マサキ)
東京工業大学 理学院物理学系 准教授

<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ

<報道担当>
東京工業大学 総務部 広報課
科学技術振興機構 広報課
東京大学 大学院工学系研究科 広報室
理化学研究所 広報室 報道担当

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