東洋的自己の哲学に基づくコロナ禍における「わたし」と「われわれ」の関係性の探究
2020-10-15 京都大学
出口康夫 文学研究科教授は、日本電信電話株式会社(NTT)と共同で、withコロナ時代において人々が感じる孤独感・疎外感や帰属意識の低下などの問題を、個人とチーム・社会との関係性の観点から解明する、性格特性尺度「Self-as-We尺度」を開発しました。
テレワークや遠隔授業などWithコロナ時代における新たな生活様式が広がる中で、孤独感や疎外感、あるいは帰属意識の低下に伴う不安を訴える人が増加しています。こうした状況下で、チーム(職場・学校など)や社会(地域や国など)といった集団とそれに属する個人の在り方が改めて問われており、それには自身が属する集団に対する行動・態度に関する性格特性が大きく影響していると考えられます。
この性格特性は文化による差が大きいため、本研究では日本を含む東アジア文化圏を対象として、東アジアの全体論的自己の思想の流れを汲む「われわれとしての自己観」(Self-as-We)に基き、チームに対する行動・態度を表す性格特性を尺度化しました。この尺度(Self-as-We尺度)では、チームに対する行動・態度の観点から、「われわれとしての自己観」を2カテゴリ11種類の下位概念にまとめ、それぞれの下位概念を各2問のアンケート質問項目に具体化しました。そして、本尺度の信頼性を確認するため、500名規模の質問紙調査を実施しました。その結果、「われわれ志向」「わたし志向」と呼びうる、チームに対する性格特性の大まかな傾向が見えてきました。
本尺度は、地域社会や国、人類全体など、より大規模な集団に対する個人の行動・態度に関する性格特性の測定にも使用することができます。それによって、例えば排外的行動などに至るような人と社会の関係における孤独感・疎外感や帰属意識の問題の要因の探究につながることが期待されます。
本研究成果は、2020年10月13日に発表されました。なお、Self-as-We尺度の詳細は学術誌「PROSPECTUS」に掲載されています。