2020-09-02 東北大学 大学院工学研究科,科学技術振興機構
ポイント
- 電子機器の排熱やその再利用に向けて熱流の自在な制御が求められている
- スピン熱伝導物質を用いた熱伝導の新しい制御法を提案し実証した
- アクティブな排熱や蓄熱、調温デバイスなどへの応用が期待される
私たちの身の回りにはさまざまな形態のエネルギーが存在しますが、その大部分は最終的には熱に姿を変えます。その熱が蓄積すると、小型・集積化が進む電子機器の劣化や故障の原因になります。熱流の量や方向を自在に制御できれば、機器の信頼性やパフォーマンスを向上させられるうえ、エネルギー源としての熱の再利用も可能になります。
東北大学 大学院工学研究科 応用物理学専攻 藤原研究室の寺門 信明 助教(兼 JST さきがけ研究者)らの研究グループは、スピン熱伝導物質であるマグノンと呼ばれる特殊な粒を用いた熱流の新しい制御法を提案しその実証に成功しました。熱分布に応じて変化するアクティブな排熱や蓄熱、超精密温度制御が可能な調温デバイスなど次世代の熱マネジメント技術への応用が期待されます。
本研究成果は、2020年9月2日(英国時間)に英国科学誌「Scientific Reports」に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「熱輸送のスペクトル学的理解と機能的制御」(研究総括:花村 克悟 東京工業大学 工学院 教授)における「スピン熱伝導を利用した熱伝導可変材料の創出」(課題番号:JPMJPR18I7、研究者:寺門 信明)」、および日本学術振興会 科研費(若手研究(A))「スピン熱伝導性薄膜による能動的熱流制御」(研究課題番号:17H04811、研究代表者:寺門 信明)の支援を受けて実施されました。
<論文タイトル>
- “Dynamic control of heat flow using a spin-chain ladder cuprate film and an ionic liquid”
- DOI:10.1038/s41598-020-70835-z
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
寺門 信明(テラカド ノブアキ)
東北大学 大学院工学研究科 応用物理学専攻 助教
藤原 巧(フジワラ タクミ)
東北大学 大学院工学研究科 応用物理学専攻 教授
<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
東北大学 工学研究科 情報広報室(沼澤)
科学技術振興機構 広報課