車載用燃料電池の電解質材料として期待
2020-05-14 京都大学
堀毛悟史 高等研究院物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)准教授、小川知弘 同特定研究員らの研究グループは、高橋一輝 株式会社デンソー研究員、西山裕介 株式会社JEOL RESONANCE研究員らと共同で、湿度ゼロ、120℃の環境において高い性能を示す電解質材料の合成に成功しました。
酸素ガス(O2)と水素ガス(H2)を燃料とする燃料電池は、水のみを排出するため、クリーンなエネルギー源と言われ、その用途が広がっています。そのひとつが車であり、車載用の燃料電池のさらなる普及のためには、電池を構成する材料の高性能化が必要となります。
本研究では、燃料電池を構成する材料である電解質の課題解決のため、水素イオンを多く持つリン酸(H3PO4)同士を金属イオン(Zn2+)でつなぎネットワーク化させ、さらに、結晶化を抑制するアンモニウムイオンを同時に入れた「配位高分子ガラス」を合成しました。放射光X線や固体核磁気共鳴(NMR)測定によって構造解析したところ、水素イオンのみを伝導する機構を持つことが確認できました。また、燃料電池を作成し、湿度ゼロ、120℃の環境において電気出力特性を評価したところ、電極面積1cm2の燃料電池セルにて最大出力密度150 mW/cm2の性能を示しました。
今回合成した配位高分子ガラスは、ガラスを形成する金属イオンや、分子の種類をより幅広く検討することによって、燃料電池の性能向上、特に車載に求められる環境での用途展開につながることが期待されます。
本研究成果は、2020年5月13日に、国際学術誌「Chemical Science」に掲載されました。
図:本研究のイメージ(イラスト:高宮泉水 iCeMS特定助教)
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1039/D0SC01737J
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/250857
Tomohiro Ogawa, Kazuki Takahashi, Sanjog S. Nagarkar, Koji Ohara, You-lee Hong, Yusuke Nishiyama and Satoshi Horike (2020). Coordination polymer glass from a protic ionic liquid: proton conductivity and mechanical properties as an electrolyte. Chemical Science.
- 日刊工業新聞(5月14日 23面)に掲載されました。