2019-10-11 国立天文台
【概要】
近畿大学総合社会学部のソフィア・リカフィカ・パトリック准教授と国立天文台天文シミュレーションプロジェクトの伊藤孝士助教からなる研究グループは、太陽系の地球型惑星である水星・金星・地球・火星の軌道配置や質量分布を解明するため、これまで広く受け入られてきた原始惑星系円盤モデルから出発して惑星が形成されるまでの過程を、詳しい数値シミュレーションで検証しました。その結果、従来言われて来た円盤モデル(例えば「グランド・タック」モデルと呼ばれるものなど)から出発したのでは太陽系の地球型4惑星の形成を十分満足には再現できないことが分かりました。そしてこの結果より、地球型4惑星の形成に対する新たな制約条件(初期の円盤は現在の金星-地球軌道間の狭い領域において大きな面密度を持ち、その内外には低密度の領域を伴う、など)が与えられました。
(2019年10月11日掲載)
図1:本研究で検証が行われた地球型惑星の形成過程に関与する原始惑星系円盤の三種類のモデルの模式図。地球-金星軌道間の領域に質量が集中し、かつその内と外に低密度の領域を伴う円盤(右)ならば、現在観測されている地球型4惑星の軌道・質量分布を比較的よく再現します。しかし面密度があまり変わらない古典的な円盤モデル(左)や狭い範囲だけに質量が分布する昨今流行の円盤モデル(中)では、地球型惑星の軌道・質量分布が再現される確率は高くありません。
Credit: ソフィア・リカフィカ・パトリック(近畿大学),国立天文台
これらの結果は2019年9月27日に米国の国際学術誌 The Astrophysical Journal にオンライン掲載されました。詳しくは近畿大学からのニュースリリース「数値シミュレーションにより地球型惑星の形成を再現」(2019年9月27日)をご覧ください。
【論文について】
題目:Constraining the Formation of the Four Terrestrial Planets in the Solar System
著者:Patryk Sofia Lykawka, Takashi Ito
掲載誌:The Astrophysical Journal
DOI:10.3847/1538-4357/ab3b0a
【本研究で使用されたコンピュータについて】
本研究で実施された数値シミュレーションでは、国立天文台天文シミュレーションプロジェクトが運用する共同利用計算機群の一つである「計算サーバ」が使用されました。このシステムは、本研究に代表されるような、各々のモデル計算は小規模ながらも多数の初期値から出発する長い計算時間を必要とするシミュレーションや、超大型のスーパーコンピュータで行うシミュレーションの準備段階の計算に用いられています。2019年9月現在のシステム規模は1344コアです。第二著者の伊藤孝士氏はこの計算機システムの構築と運用にも深く関わっています。機器の詳細は以下のページをご覧ください。(右画像 クレジット:国立天文台)
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【関連リンク】
近畿大学 プレスリリース「数値シミュレーションにより地球型惑星の形成を再現」
著者による解説「論文 “Constraining the Formation of the Four Terrestrial Planets in the Solar System” に関する補遺」