ガラクタを財宝に:電子機器廃棄物を発掘して希土類元素を回収

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 (From trash to treasure: Electronic waste is mined for rare earth elements)

2019/8/14 アメリカ合衆国オークリッジ国立研究所 (ORNL)

Oak Ridge National Laboratory’s Ramesh Bhave co-invented a process to recover high-purity rare earth elements from scrapped magnets of computer hard drives (shown here) and other post-consumer wastes. Credit: Carlos Jones/Oak Ridge National Laboratory, U.S. Dept. of Energy

・ 米国エネルギー省(DOE)の研究者たちが、使用済みのハードドライブなどの磁石屑から希土類元素を抽出するプロセスを開発。従来技術と比較しても、高エネルギー効率、高コストパフォーマンスで環境にも優しいプロセスを実現。
・ 永久磁石には、コンピューターハードドライブのデータの読み書きをサポートしたり、ハイブリッド車や電気自動車のモーターを動かしたり、風力タービンと発電機を連結して発電したり、スマートフォンの電気信号を音に変換したりする働きがある。
・ 本技術では、磁石は硝酸で溶解され、その溶液はモジュールをサポートする高分子メンブレンを通って、連続的に供給される。高分子メンブレンには、抽出剤が入った多孔質中空糸が含まれており、選択的なろ過膜を形成、希土類元素のみ通過させる。希土類元素を多く含むろ過された溶液はさらに処理され、純度 99.5%以上の希土類酸化物を生成する。
・ 通常の永久磁石は、70%が希土類元素ではない鉄であることを考慮すると、これはほとんどの鉄を除去して希土類元素のみを再生したことになり、傑出した効率。不要な要素が入らずに必要な要素のみ抽出できるので、終了段階で処理や処分が必要な廃棄物の発生も少ない。
・ 希少材料は産業界からの需要が多く、科学界での再利用プロセスも進んでいるが、電気・電気機器廃棄物に含まれる磁石から純粋な希土類元素を再生するプロセスは、まだ商業化されておらず、コンピューター関連機器が世界に普及している数を考慮すると、非常にもったいない。
・ 本プロジェクトは、2013 年に DOE のアイダホ国立研究所で、化学的部分を主とした研究が始まり、その後、パデュー大学でスケールアップの技術的、経済的な実現の可能性が図られた。ORNL では、分離プロセスとスケールアップの開発が進められ、現在では本技術を商業化できる産業パートナーとの共同研究に焦点があてられている。
・ 研究チームでは、希土類元素を幅広い原材料から確実に回収するため、ハードドライブ、磁気共鳴イメージング(MRI)装置、携帯電話やハイブリッド車などの材料から回収した、様々な組成の磁石を研究した。
・ ほとんどの希土類元素は、元素周期表の原子番号 57 から 71 のランタノイドであり、ORNL の同元素に関する豊富な専門知識が役立った。・ 研究者たちは、希土類元素の回収を最適化するために、2 年以上に渡りメンブレン化学を調整した。その結果、現在では、97%以上の希土類元素を再生できるようになり、特許も取得、ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウムという 3 種類の希土類元素の回収に関する研究論文も 2 本発行。
・ ネオジムやプラセオジムからジスプロシウムを分離する研究は、2018 年 7 月に開始。これら3つの金属元素の混合酸化物は、1kg あたり US$50 で市販されている。もし、ジスプロシウムだけ抽出することができれば、この混合物の価格は 5 倍になるだろう。
・ 今後はさらに、ORNL の希土類分離技術を応用して、リチウムイオン電池から需要の高い希土類元素を分離できるかどうか、検討する予定。電気自動車の普及が見込まれる中、リチウムやコバルトの需要も高まるだろうとのこと。
・ ORNL の技術を市場で商業化させるため、DOE の OTT Technology Commercialization Fund が 2019 年 2 月より 2 年間の基金を立ち上げた。
・ 目標は、毎月数百 kg もの希土類酸化物を再生させて、製造業者が新しい材料から作製されたものと同等の品質の磁石を再生材料から作製できるように、認証、検証、保証できるようになること。
・ 本研究は、DOE の Advanced Manufacturing Office と Office of Energy Efficiency and Renewable Energy が、CMI を通じて資金を提供した。ORNL は、2013 年の CMI 設立当初より、アルミニウム-セリウム合金や磁石の再生などの新しいイノベーション分野の専門家の派遣や、戦略的方向性を提供。
・ 本技術は特許取得済みで、抽出プロセスのスケールアップは実験室レベルで実証しており、現在は ORNL のライセンシーである米テキサス州・ダラスの Momentum Technologies 社と共同で、商業用規模の希土類酸化物を量産するため、さらなるスケールアップを図っている。
URL: https://www.ornl.gov/news/trash-treasure-electronic-waste-mined-rare-earth-elements (関連情報) Momentum licneces に関する情報 Magnets – Momentum licenses ORNL technology
URL: https://www.ornl.gov/news/magnets-momentum-licenses-ornl-technology

<NEDO海外技術情報より>

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