記事解説
2018/10/27 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
件名:実験炉「常陽」、出力を縮小 運転再開優先 設計を変更 平成 30 年 10 月 27 日(土)朝日新聞朝刊 7 面
記事概要
○ 政府の高速炉開発の柱となる高速実験炉「常陽」(茨城県)の運転再開に向けた審査を巡り、日本原 子力研究開発機構は 26 日、設計を見直し、熱出力を 14 万キロワットから 10 万キロワットに縮小する、と発表した。
○ 避難計画作りが必要な自治体が半径 30 キロ圏から 5 キロ圏に狭まり、説明する対象の自治体を減らすことで、早期の再開をめざす考えだ。
○ 機構は 26 日、設計を変えた申請書類を原子力規制委員会に提出した。耐震補強工事費などが増え、対策費は約 54 億円から約 170 億円に膨らむ見通し。
○ 運転再開の目標は、これまでより 1 年遅れの 2022 年度末としている。
解 説
○ 機構は原子炉の安全性向上の観点から、原子炉を停止するための設備の多重化、装荷する燃料集合体 の最大装荷体数の削減等の炉心設計の見直しを行いつつ、照射試験に必要な高速中性子束や照射温 度等の性能を満たす条件の検討を行った結果、熱出力を 10 万キロワットとした炉心を新たに設計し た。
○ 熱出力の 10 万キロワットへの変更については、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた安全 対策と照射試験性能の確保を両立させる観点から炉心設計を見直した結果であり、説明する対象の 自治体を減らすことが目的ではない。将来的な照射試験計画や、熱出力が 10 万キロワットであった MK-II 炉心での約 18 年にわたる運転・照射試験実績も踏まえた変更であり、機構としては、安全確 保を第一として、地元をはじめとする国民の理解を得られるよう新規制基準対応に取り組む。
○ 前回申請時から進捗した先行炉の審査内容を反映し、基準地震動(耐震設計で考慮する最大の地震に よる揺れ)を当初申請よりも大きい値で算出したことによる耐震補強工事費の増加や、安全性向上のための事故対策の強化に伴い、対策費は約54億円から約170億円となった。
○ 運転再開は 2022 年度末を目標としている。原子力規制委員会の審査には真摯に対応していく。
【補足】
前回申請時には当機構からの説明が十分ではなく、熱出力を下げることに関して「避難計画作りが必 要な自治体を半径 30 キロ圏から 5 キロ圏に狭めること(説明する自治体を減らすこと)」が主目的と 認識されてしまったが、本来は原子炉の安全性向上の観点から実施したものである。
以 上
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