医療機器向けマグネシウム合金部材の成形技術を開発

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体内で分解・吸収する部材の適用を通じて低侵襲性治療に貢献へ

2018-06-05 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構,不二ライトメタル株式会社

NEDO事業において、不二ライトメタル(株)は、産業技術総合研究所との共同研究により、医療機器向けにマグネシウム合金部材の成形技術を開発しました。

マグネシウムは、人体に必須な元素で、人の体内で安定的に分解・吸収される性能を持つため、本技術を用いて医療機器部材に適用されることで、体内に埋め込んだ機器による炎症リスクなどを抑えた低侵襲性治療と、患者の生活の質(クオリティー・オブ・ライフ)の向上に大きく貢献できます。

また今回、不二ライトメタル(株)は、マグネシウム製医療機器部材の素材作製から加工までの一貫製造・供給を事業化するための研究設備を自社内に導入したことで、今後、部材の量産化を目指します。

医療機器向けマグネシウム合金部材の成形技術を開発

図1 マグネシウム合金精密管材

1.概要

手術後に患者の体内に留置されるステント※1や骨固定スクリュー、ステープル※2などの金属製の医療機器は、体内に残存することで炎症反応を引き起こすことがあり、取り除くためには再手術が必要となります。そのため医療業界では、患者への負担が少ない低侵襲性治療を実現する革新的な医療機器材料として、人体に必須な元素で、体内で分解・吸収されるマグネシウムの採用が期待されています。マグネシウムを部材に用いた医療機器の製作が実現できれば、患者の生活の質(クオリティー・オブ・ライフ)の向上に大きく貢献できると考えられます。

一方、マグネシウムを医療機器部材として適用するには、体内での分解期間の延長と分解挙動の安定性向上が課題とされており、そのためには加工精度の高度化と部材の機械的特性および体内での分解性能の改善が必要です。

今般、不二ライトメタル株式会社は、NEDOの「中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業」において、産業技術総合研究所との共同研究により、医療機器にも適用可能な優れた形状精度・特性を有するマグネシウム合金部材の成形技術の開発に成功しました。また今回、マグネシウム合金部材の素形材作製から加工までの一貫製造・供給を事業化するための研究設備を自社内に導入しました。

今後、研究設備を用いて、各種医療機器の仕様に合致した管・棒・線材の量産技術の開発に取り組むとともに、当該材料を用いた革新的低侵襲性治療の拡大に貢献します。

2.今回の成果
【1】高精度の管材の成形加工技術を開発

マグネシウム合金部材は、生体内で分解・吸収が進むにつれ、肉厚が減少していきます。そのため、安定的に分解・吸収特性を発現させるには、均一な肉厚の実現、すなわち加工精度の高度化が課題となっていました。しかし、マグネシウム合金は塑性加工性が低く変形しにくい材料であるため、部材に仕上げる際の押出し・引抜き加工によって均一な肉厚を有する管材として成形加工することは難しいとされています。そこで不二ライトメタル(株)は、マグネシウム合金の細管押出し・引抜き加工法に関する産業技術総合研究所のシーズ技術を基盤に、合金部材の製造工程における押出温度や引抜速度などの各種条件パラメータと肉厚の相関関係を調査しました。その結果、肉厚精度への寄与度が特に大きいキーパラメータが抽出でき、これらを最適化することで医療機器の一つである生体吸収性スキャフォールド※3向けの部材として、マグネシウム合金を内径1.5~3.0mm、肉厚110~300μmの管材に高精度で成形加工する技術の開発に成功しました。

【2】管・棒・線材の組織制御技術を開発

マグネシウム合金部材の機械的特性と分解性能の改善には、部材の組織制御が重要となります。不二ライトメタル(株)は、組織の形成に大きな影響を与える引抜きおよび熱処理の工程について最適な処理条件を調べることで、管・棒・線材に高い機械的特性と分解性能を持たせるための組織制御を実現しました。

マグネシウム合金ワイヤーとその組織のイメージ

図2 マグネシウム合金ワイヤーとその組織

【3】研究設備の導入

不二ライトメタル(株)は今回、管・棒・線材の製造用の引抜加工設備に加えて、素形材となるマグネシウム合金を製造するための鋳造設備および押出設備を自社内に導入しました。不二ライトメタル(株)単独で医療機器部材向けのマグネシウム合金から管・棒・線材まで一貫製造できる体制を整えたことで、量産化に向けた研究開発の加速が期待できます。

医療機器向けマグネシウム合金部材の作成フローのイメージ図
図3 医療機器向けマグネシウム合金部材の作成フロー

【注釈】
※1 ステント
人体の血管や腸管などの管状部分を内側から広げる医療機器。
※2 ステープル
切開した部位をとじ合わせるために用いられる、コの字型の細線医療機器。
※3 生体吸収性スキャフォールド
生体内で分解・吸収され完全に消退するステント。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO イノベーション推進部 担当:金子

不二ライトメタル株式会社 研究開発部 担当:高田

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:高津佐、坂本、藤本

0705金属加工
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