プラズマを利用した異種金属接合技術を開発高品質で電力消費量が1/3以下に

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産学連携による成果・幅広い応用が期待

2020-09-18 核融合科学研究所,東邦金属株式会社

概要

 自然科学研究機構 核融合科学研究所(岐阜県土岐市 所長・竹入 康彦)の森﨑友宏教授、村瀬尊則実験応用技術係長、東邦金属株式会社(大阪市中央区 取締役社長・小樋 誠二)の渡部聡取締役技術開発部長らの研究グループは、プラズマを利用した異種金属接合技術を新たに開発し、融点の高いタングステンと熱伝導性の高い銅合金など、性質の全く異なる金属の高品質な接合に成功しました。今回開発に成功した新技術は、将来の核融合炉へ向けた開発研究の過程で生まれたものであり、同様な技術を必要とする交通・建設機器や、社会インフラを支える送電設備等に用いられる部品の性能向上といった、産業分野にも大きく貢献する成果として期待されます。

 この成果は、特許「ダイバータ用異種金属接合体」(特許第6563581号)を取得するとともに、9月20日から9月25日に開催される国際会議(31st Symposium on Fusion Technology : SOFT2020)において発表される予定です。

研究の背景

 核融合エネルギーは、将来のクリーンなエネルギー源として早期実現が期待されています。核融合炉を構成する機器の中には、高い耐熱性能と除熱性能の両立が求められるものがあり、各国で精力的な開発研究が行われています。一方、私たちの日常生活に不可欠な電気を家庭に送り届ける送電設備や、急速に普及した電気自動車にも耐熱・耐摩耗性能と除熱・電気伝導性能を共に満足する部品が必要不可欠で、それらの品質向上と生産コストの低減が求められています。

 両者とも、耐熱・耐摩耗性は、高硬度・高融点金属であるタングステン(W)が担い、除熱・電気伝導は、Wよりも熱伝導性が高く電気抵抗の低い銅(Cu)が担う点が共通しています。具体的には高熱にさらされる面にWを使用し、その裏面にCuを接合することで実現します。これまでWとCuの接合には、異種金属接合の標準的な手法である「ロウ付け」が用いられてきました。これは、二つの金属の間に融点の低い金属(ロウ材)を挟み込み、高温で溶かして接着させるという手法です。しかし、このロウ付けでWとCuを接合すると、①接合強度が弱い、②接合過程で生じる酸化物の生成に起因する接合不良が発生しやすい、③WとCuの熱膨張の違い(熱による変形の度合いの違い)から接合面に亀裂が発生しやすい、といった問題点がありました。

 この課題解決に向け、ロウ付けに代わる、WとCuを強固に接合する新たな技術の確立を目指し、核融合科学研究所は東邦金属(株)と産学連携による共同研究を行ってきました。

研究成果

 研究グループは、プラズマを利用した新しい異種金属接合技術(粉末固相接合法)を開発しました。この新技術により、従来のロウ付け法を用いた場合の問題点を解決し、高品質なWとCuの接合に成功しました。

 本技術のポイントは、以下の3点です(図1)。①接合する材料どうしを強い力で押し付けながら、大電流を流します。すると材料間の僅かな隙間に「プラズマ放電」という小さな雷が生じ、この雷が落ちた場所が部分的に溶けてくっつきます。この接合過程で、周りに僅かでも酸素があると、Wが酸化して接合不良が発生してしまいます。②そこで強い抗酸化作用のある水素を用いて酸化物の生成を抑制します。③WとCuの熱膨張の違いを緩和するため、WとCuの粉末を均一に混ぜ合わせた中間層を設けます。

 このような工夫を用いることで、接合面の近傍に生じる欠陥を極めて少なくするとともに(図2)、亀裂の発生を効果的に抑制して、WとCuの高強度で高品質の接合に成功しました。

図1 今回開発したプラズマを用いた接合法と、従来のロウ付け接合法の違い。

図1 今回開発したプラズマを用いた接合法と、従来のロウ付け接合法の違い。

図2 接合面に生じた欠陥の比較。ロウ付け接合を用いた場合(左)に比べると、本技術を用いた場合(右)は欠陥が極めて少なくなっています。

図2 接合面に生じた欠陥の比較。ロウ付け接合を用いた場合(左)に比べると、本技術を用いた場合(右)は欠陥が極めて少なくなっています。

成果の意義と今後の展開

 本技術は、ロウ付け法と比べて、接合処理における熟練技能が不要で、不良発生率が低く、短時間(数分~1時間)で接合を完成させることができます。また、現在研究が進められている他の接合技術(加圧焼結法※1、熱間等方圧加圧法※2)等と比べて、電力消費量は約1/3~1/5と省エネで環境への負荷も低減されます。さらに本技術は、WとCu以外の様々な金属をはじめ、セラミックスやプラスチックと言った非金属材料にも適用可能で、これまで困難とされてきた異種材料間の高品質な接合を可能にする革新的技術です。

 将来の核融合炉へ向けた開発研究の過程で生まれた本技術は、今後、同様の技術を必要とする電気自動車、送電設備、鉄道車両や建設重機等の大型機器から、非金属材料を用いる小型・精密機器まで、幅広い産業分野への貢献が期待されます。

【用語解説】

※1 加圧焼結法:粉末状の材料などを高い圧力をかけて焼き固める方法。

※2 熱間等方圧加圧法:加圧焼結法の一つ。数百度から数千度に加熱しながら、アルゴンなどのガスを用いて等方的な圧力をかける材料の加工方法。

【研究体制】

自然科学研究機構 核融合科学研究所

 森﨑 友宏(ヘリカル研究部高密度プラズマ物理研究系教授)

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