2018-03-20 資源エネルギー庁
「知っておきたいエネルギーの基礎用語~『コジェネ』でエネルギーを効率的に使う」 でご紹介したように、電気と熱を同時に生み出す「コージェネレーションシステム(コジェネ)」は、エネルギーを効率的に使うことのできるシステムです。
では、そもそも熱エネルギーは現在どのように供給され、どのように使われているのでしょうか。今回は、あまり知られていない「熱エネルギー」について見てみましょう。
低温から高温まで、さまざまな熱エネルギーの用途
「熱エネルギー」と一言で言っても、必要とされる温度帯は用途によってさまざまです。たとえば、家庭用コジェネである「エネファーム」で生み出される熱は、主に風呂などでの給湯に使われていますが、ここでの熱は100℃以下で、「低温(民生用)」に分類されます。このような低温の熱エネルギーは、空調機器でも利用されています。
同じ「低温」でも、産業用の熱エネルギーはもう少し温度が高く、100℃から200℃です。主な用途としては軽工業プロセス、たとえば食品を加工する際に使用されます。産業用では、さらに高温の熱エネルギーが必要となる場合もあります。金属加工などの重工業プロセスがそのケースで、産業によっては1700℃もの熱エネルギーが必要となります。
熱の主な供給源は化石燃料と電力
これらの熱エネルギーを供給する主な燃料には、①石炭やガスなど化石燃料、②電力、③バイオマス(「知っておきたいエネルギーの基礎用語~地域のさまざまなモノが資源になる『バイオマス・エネルギー』」 参照)や太陽熱、地中熱など再生可能エネルギーがあります。
このうち、現在もっとも多くを占めているのは化石燃料で、化石燃料を使った熱の供給方法としては、コジェネ、ボイラー、燃焼炉があります。一方で、電力を燃料とする場合は、ヒートポンプ、電気炉が使われています。
今後、低炭素化を進めていく上では、こうした、熱エネルギーの多くを占めている化石燃料由来の熱を、さらに効率的なものとしていく必要があります。皆さんもご存じのとおり、化石燃料は他の燃料にくらべて多くのCO2を排出します。下の図は、約4000の民間企業を対象に資源エネルギー庁が実施したアンケートや総合エネルギー統計などをもとに推計した、熱供給方法ごとのCO2排出量を示したものです。化石燃料を用いた熱供給によって排出されるCO2は4.5億トンほどと推計され、まだ導入が十分に進んでいない電力を使った熱供給と比較すると、多くのCO2が化石燃料による熱供給から排出されていることがわかります。
熱の主な供給方法
※CO2排出量は、約4000社へのアンケート結果や総合エネルギー統計などに基づく推計
実は重要な熱エネルギーの低炭素化
下の図は、2030年のエネルギーの理想的なあり方を描いた「エネルギーミックス」を達成するために解決が必要な、それぞれのエネルギー分野の課題を図にしたものです。
エネルギーミックス必達のための課題(2015年度から2030年度に向けて)
※ここでの「熱」は業務・家庭部門の非電力需要、「産業」は産業部門の非電力需要のことを指す
CO2排出量削減という問題を語るとき、図の左側にあるような電力に関する問題はよく議論されますが、熱エネルギーに関する論議はともすれば忘れられがちです。しかし、熱エネルギーの低炭素化も、実はとても重要な分野であり、「省エネ」と、CO2排出量を限りなくゼロにする「ゼロエミッション(ゼロエミ)」に向けた取り組みを進めることが必要です。
コジェネなどを通じて熱を効率的に利用する
では、熱エネルギーの低炭素化を図るにはどのような方法が考えられるでしょうか。そのひとつが、コジェネや省エネ設備・機器の利用を促進することです。電気と熱の両方を有効利用できるコジェネや、高効率な省エネ機器を導入することで、CO2排出量の削減に貢献することができます。こうした取り組みに加え、たとえば、発電などで生み出される熱を、近隣の建物や地域全体で面的に融通し活用する、「熱の面的利用」を進めることも重要です。
また、「面的利用」が横の利用だとすると、縦の利用方法としての「熱のカスケード利用」の促進が期待されています。カスケード利用とは、高温域の熱を、発電などの高温を必要とする用途に使い、そこから生じた排熱を蒸気や温水として利用するといったように、熱エネルギーの温度帯に応じてさまざまな用途に段階的に活用する方法です。
※CO2排出量は、約4000社へのアンケート結果や総合エネルギー統計等に基づく推計
さらに、化石燃料を太陽熱やバイオマスなどの再生可能エネルギーに置き換えていくことなども求められるでしょう。これらの方策を進めるためには、電気料金や設備のコスト削減などの課題もまだまだ残されています。
2030年エネルギーミックス実現に向けた熱政策の進捗
エネルギーミックス実現のため、今後もさまざまな政策で、熱エネルギーの低炭素化を後押ししていくことが求められています。
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