黒体限界を超える高密度の光電流を生成可能な熱輻射光源/太陽電池一体型熱光発電デバイスの開発に成功

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太陽光や熱エネルギーの有効利用による脱炭素社会の実現に向けて

2021-08-11 京都大学

野田進 工学研究科教授、井上卓也 同助教、池田圭佑 同修士課程学生(研究当時)、浅野卓 同准教授らの研究グループは、高温の物体から生じる熱輻射から、黒体限界を超える高密度の光電流を生成することが可能な、熱輻射光源/太陽電池一体型・熱光発電デバイスの開発に成功しました。これは、太陽光(熱)や各種熱エネルギーを利用した、高出力密度かつ高効率な発電システムの実現に向けた重要な一歩であるといえます。

一般に、物質を高温に加熱すると、熱輻射が生じます。例えば、太陽、白熱電球など、加熱された物体が光る現象は、全て熱輻射に基づくものです。このような熱輻射と太陽電池を組み合わせた熱光発電は、エネルギーの有効利用を可能とする発電方式の1つとして、近年、注目を集めています。しかし、熱光発電には、いくつかの重要な課題が存在します。その一つが黒体限界と呼ばれるものです。これは、従来の熱光発電システムにおいては、熱輻射を一旦、自由空間(外部空間)へ取り出し、その後、太陽電池へ入射しますが、自由空間に取り出す際に、光源内で発生した熱輻射パワーを全部取り出すことが出来ず、最終的に太陽電池で生成される電力密度(今回、特に光電流密度に着目)が、熱輻射パワーを全て取り出す場合に比べ、一桁以上小さくなってしまうという課題です。

本研究グループは、高温(>1100K)の熱輻射体と、室温に保った太陽電池を、透明(高屈折率)基板を介して、光の波長よりも十分小さな距離(<140nm)まで近づけた一体型熱光発電デバイスを開発することで、高温物体の内部で発生した高密度な熱輻射を、自由空間へ取り出すことなく、直接、太陽電池へと取り込むことを可能としました。その結果、従来方式に比べて5-10倍の密度の光電流を太陽電池で生成することに成功するとともに、最終的に黒体限界をも超える光電流密度の生成に成功しました。この成果は、太陽光や各種熱エネルギーを利用した発電システムの大幅な小型化・高出力化・高効率化の第一歩を達成したものと言え、将来の脱炭素社会の実現の鍵を担う技術としての展開が期待されます。

本研究成果は、2021年7月28日に、国際学術誌「ACS Photonics」に掲載されました。

黒体限界を超える高密度の光電流を生成可能な熱輻射光源/太陽電池一体型熱光発電デバイスの開発に成功図: 黒体限界を超える熱輻射を利用した発電方式のコンセプト図。 (a)従来の発電方式の模式図。自由空間の屈折率が光源や太陽電池の屈折率よりも小さいため、光源の内部で発生した熱輻射のほんの一部(1)しか外部に取り出すことが出来ず、大部分(2)は光源内部に閉じこもります。(b)黒体限界を超える発電方式の模式図。熱輻射光源と太陽電池(透明(高屈折率)基板付き)を極めて近くに配置することで、自由空間の伝搬を介さずに、物体間で直接熱輻射のやり取りが発生し、従来の限界を超えた発電が可能となります。

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:野田進
研究者名:井上卓也
研究者名:浅野卓

メディア掲載情報
日刊工業新聞(8月12日 17面)に掲載され、大阪テレビ(8月11日)で放送されました。

0402電気応用
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