2021-04-27 愛媛大学
ポイント
- 平面、両凹面をもつ2種類のピロール縮環アザコロネンの簡便合成を達成した。
- 二つの電子豊富なアザコロネンは、三次元構造に応じた電子不足型π電子系化合物と相互作用することを明らかにした。
- 曲面構造をもつアザコロネンは、平面構造の物と比べて大環状共役に基づく芳香族性が弱くなることを見出した。
概要
愛媛大学大学院理工学研究科の高瀬雅祥准教授、宇野英満教授らの研究グループは、信州大学繊維学部の小林長夫特任教授と共同で、平面および曲面状のピロール縮環アザコロネン類の合成に成功し、その特徴的な構造、酸化還元特性、ならびに芳香族性に及ぼす影響などを明らかにしました。これまでにも母骨格であるヘキサピロロヘキサアザコロネンの合成報告例があり、その酸化還元特性や芳香族性などの性質が明らかにされてきました。しかしそのほとんどの例が、外周部にかさ高い置換基を有する化合物で、集積化に伴うπ電子機能の変化や電子不足型π電子系化合物との相互作用などに関する研究例はありませんでした。本研究では、骨格の特徴を評価しやすいアルキル置換された平面誘導体と、π電子系が拡張された両凹面を持つ曲面誘導体の二つが合成されました。それぞれの構造的特徴が反映された基礎物性が解明されました。
二つの研究成果は、それぞれ2021年3月5日、同年4月2日にアメリカ化学会誌「The Journal of Organic Chemistry」に掲載され、cover pictureにも採用されました。