2020-08-11 国立天文台
宇宙に存在する多様な形態の銀河が人工知能によって分類されるイメージイラスト。動物画像の分類など、さまざまな場面で応用されているディープラーニング技術を銀河の形態分類に用いることで、「渦巻銀河」だけでなく、「棒渦巻銀河」や「衝突銀河」などさまざまな形に分類できるようになると期待されています。(クレジット:国立天文台/HSC-SSP) オリジナルサイズ(9.5MB)
すばる望遠鏡で得られた画像にある56万個もの銀河を、人工知能を活用してその形態を分類した結果、特に渦巻銀河の形を97.5パーセントという非常に高い精度で自動分類することに成功しました。今後、市民天文学プロジェクト「GALAXY CRUISE(ギャラクシークルーズ)」とも共同して、衝突銀河などのより多様な銀河の形態分類を進めることを目指しています。
銀河には、渦を巻いた形のものから滑らかな楕円の形のものまで、さまざまな形が存在することを、米国の天文学者エドウィン・ハッブルが発見しました。現在知られている多様な形の銀河が、どうやって生まれどのように進化してきたかは、銀河天文学において今もなお最大の謎の一つです。
国立天文台の研究者を中心とする研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、以下HSC)を使って得られた膨大な観測データに、人工知能の一つであるディープラーニング技術を適用する「すばる銀河動物園プロジェクト」を立ち上げました。この観測データは、HSCを用いた300夜にも及ぶ大規模探査(すばる戦略枠プログラム)によって得られたものです。
今回、「すばる銀河動物園プロジェクト」の最初の成果として、97.5パーセントという非常に高い精度で銀河の形を自動的に分類することに成功しました。渦を巻いた形に識別された銀河はおよそ8万個に上り、その多くは25億光年以上離れた宇宙に存在していることが分かりました。HSCによる高感度の観測データからは56万個もの銀河が検出されているため、これら一つ一つを人間の目で見分けながら全ての銀河の形を判別するのはたいへんな労力を必要とします。しかし、ディープラーニング技術がこの問題を解決したのです。
人間の目で形を見分けた銀河から、ある程度の数の訓練データを用意すれば、銀河をもっとさまざまな形に分類することができます。国立天文台の市民天文学プロジェクト「GALAXY CRUISE」で市民天文学者が銀河を分類した成果を、ディープラーニング技術と組み合わせることで、より形が複雑な衝突銀河を大量に見分けられる可能性があります。すばる望遠鏡の新しい観測装置「超広視野多天体分光装置」を用いて銀河までの距離を測定する大規模探査が、現在計画されていますが、今後はそれと合わせて、銀河の形態が時間とともにどのように変化してきたのかを調べることも期待できます。
この研究成果は、Tadaki et al. “Spin Parity of Spiral Galaxies II: A catalogue of 80k spiral galaxies using big data from the Subaru Hyper Suprime-Cam Survey and deep learning”として、英国の王立天文学会誌オンライン版に2020年7月2日に掲載されました。
クレジット:国立天文台/HSC-SSP