南極成層圏の大気の乱れが日本の南海上の台風発生域に影響することを証明

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2019年9月に南極上空で起こった成層圏突然昇温の遠隔影響とそれを利用した季節予測精度向上の可能性

2020-08-07 海洋研究開発機構,科学技術振興機構

ポイント
  • 2019年9月に、南極上空で非常にまれな事象である成層圏突然昇温が発生した。
  • シミュレーションを実施、解析した結果、成層圏突然昇温の影響で熱帯域の対流活動が活発化していたことを突き止めた。
  • 対流活動の活発化は、フィリピン海、南シナ海などの日本に上陸する台風の発生場所で顕著であった。
  • 季節予測の精度向上にあたっては、成層圏の現象の再現性を上げることも重要である。

海洋研究開発機構 地球環境部門 環境変動予測研究センターの野口 峻佑 ポストドクトラル研究員らの研究グループは、2019年9月に南極上空で発生した成層圏突然昇温の影響で熱帯域の対流活動が活発化していたことを突き止めました。

成層圏突然昇温は、冬季の成層圏において極を取り巻く大きな流れが乱れることにより極域の温度が急激に上昇する現象です。この現象に伴い、熱帯域では下部成層圏の温度が低下することが知られていましたが、近年、さらに下方の対流圏にもその影響が及ぶ可能性が指摘されてきました。しかし、熱帯域の独自の変動と成層圏突然昇温に伴う変動とを区分することは困難であり、その影響の大きさは不明でした。

そこで本研究グループでは、わずかに異なる初期値から多数の予測シミュレーションを行うアンサンブル予測を実施し、成層圏突然昇温の有無による熱帯対流活動の変化を調べました。その結果、この成層圏突然昇温の影響によって、熱帯域の北半球側において対流活動に伴う上昇流が強化されていたことの実証に成功しました。対流活動の活発化は、特に、アジアモンスーン域の南側(フィリピン海、南シナ海、インドシナ半島など)で顕著であり、成層圏突然昇温に伴う熱帯下部成層圏の温度低下が、この領域の積雲をより強く立たせていたことも明らかになりました。

本研究の結果は、熱帯域の対流活動の活発化が南極成層圏における顕著現象の発生と確かに結び付いていることを示すものであり、台風発生などの季節予測を実現、向上させていくにあたっては、成層圏の現象の再現性を上げることも重要であることを示唆します。

本成果は2020年8月7日(米国東部夏時間)、国際科学誌「Geophysical Research Letters」オンライン版に掲載される予定です。

本研究は科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業 CREST「大型大気レーダー国際共同観測データと高解像大気大循環モデルの融合による大気階層構造の解明」(JPMJCR1663)および科学研究費補助金(19K14798)の支援を受けて行われたものです。

詳しい資料は≫

<論文タイトル>
“Robust enhancement of tropical convective activity by the 2019 Antarctic sudden stratospheric warming”
DOI:10.1029/2020gl088743
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>

野口 峻佑(ノグチ シュンスケ)

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