400度で動作する固体酸化物型燃料電池開発へ前進
2020-05-28 九州大学,宮崎大学,科学技術振興機構
九州大学 稲盛フロンティア研究センター、九州大学 大学院工学府 材料物性工学専攻および九州大学 エネルギー研究教育機構の山崎 仁丈 教授は、九州大学 稲盛フロンティア研究センターの兵頭 潤次 特任助教、九州大学 大学院工学府 材料物性工学専攻の北林 康喜 氏(修士課程2年)、星野 健太 氏(博士課程3年)および宮崎大学 工学教育研究部の奥山 勇治 准教授らと共同で、400度の中温度で動作する固体酸化物型燃料電池(SOFC)に用いられるプロトン(H+)伝導性電解質BaZr0.4Sc0.6O3-δを開発しました。
SOFCに用いる電解質材料は、結晶粒内と粒界を含んだ全プロトン伝導度が0.01ジーメンス毎センチメートルを超え、かつ燃料電池動作環境に含まれる水素、酸素、二酸化炭素、水蒸気に対して安定でなければなりませんが、このような材料はこれまで見いだされていませんでした。
本研究グループは、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)にスカンジウムを60パーセントという極めて高い濃度で添加することで、燃料電池動作の目標温度である400度において結晶粒内と粒界を含んだ全プロトン伝導度が0.01ジーメンス毎センチメートルを超えることを初めて見いだしました。さらに、その高いプロトン伝導性は400度において200時間維持され、400度、98パーセントという高濃度の二酸化炭素雰囲気下においても240時間以上安定であることが実証されました。
本電解質を用いた固体酸化物型燃料電池では、中温動作により高価な白金や耐熱材料が不必要となるため、燃料電池の大幅コストダウンが期待されます。
本研究成果は、2020年5月28日(日本時間)にWiley-VCH社が発行する科学誌「Advanced Energy Materials」のオンライン版で公開される予定です。
本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR18J3)の支援を受けました。