(MIT engineers build advanced microprocessor out of carbon nanotubes)
2019/8/28 アメリカ合衆国マサチューセッツ工科大学(MIT)
・ MIT が、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNFET)を使用したマイクロプロセッサを従来のシリコンチップ製造プロセスにて構築することに成功。
・ 1 と 0 のビットの切り替えで演算を行うシリコントランジスタは、マイクロプロセッサの重要なコンポーネントとしてコンピュータ産業を長年けん引してきた。「ムーアの法則」の予測のとおり、トランジスタの微細化が進み、その膨大な数がチップに詰め込まれ、さらに複雑化した演算を支えているが、その微細化と効率性の限界が懸念されている。
・ 次世代コンピュータ開発において主要な目標となっている CNFET は、シリコンに比して 10 倍のエネルギー効率と高速性が見込まれているが、大量生産時に性能に影響する欠陥が多く発生するため実用化が進んでいない。
・ 今回、 このような欠陥を大幅に低減する新技術を開発。従来のシリコンチップファウンドリのプロセスで CNFET を製造して機能の完全な制御が可能に。商用マイクロプロセッサと同様のタスクを実行する、1 万 4 千個超の CNFET を搭載した 16 ビットのマイクロプロセッサを実証。
・ 同マイクロプロセッサは、オープンソースのインストラクション・セット・アーキテクチャである RISC-Ⅴ をベースとし、命令のフルセットを正確に実行。「Hello, World!」プログラムの改訂版も実行し、「Hello, World! I am RⅤ16XNano, made from CNTs」をプリントアウトした。
・ CNT の金属的な部分がトランジスタのオンオフ切り替えの減速や停止を起こす問題の解決には、高度な電子回路で CNT 純度が 99.999999%であることが必要だが、今日の技術ではこのような純度の達成は不可能。
・ そのため、コンピューティングを妨害しないような CNFET の配置を可能にする「DREAM(“designing resiliency against metallic CNTs”の頭文字の組合せ)」と称する技術を開発。これにより、現行技術では可能な 99.99%の純度を達成。
・ 金属 CNT は、トランジスタに付随する様々なロジックゲートの組み合わせに影響を与えるため、シミュレーションを通じてそれらを特定。チップ設計プログラムのカスタマイズにより、金属 CNT の影響を受けにくいロバストな組合せを自動的に学習するようにした。
・ また、CNFET 製造において、CNT 同士がランダムに付着して大きな束を形成し、チップのコンタミとなる問題を「RINSE(removal of incubated nanotubes through selective exfoliation」の開発で解決。大束になった CNT がウェハーにコーティングしたポリマーと共に除去され、チップに単一の CNT のみが残る。同様な手法に比してチップの粒子密度が 1/250 に低減。
・ さらに、バイナリコンピューティングで必要な N 型と P 型 2 種類のトランジスタを CNT で作る場合の課題を「MIXED(metal interface engineering crossed with electrostatic doping)」の開発で解決。白金とチタンの使用で両型のトランジスタを作製し、原子層堆積法で CNFET を酸化物でコーティングすることで、トランジスタ特性を特定のアプリケーションに適合させることができる。
・ 本研究を支援する国防高等研究計画局(DARPA)のプログラムを通じ、CNFET の実用化に向けてシリコンチップファンドリにてこれらの製造技術の実証を開始している。
・ 本研究は、Analog Devices、米国立科学財団(NSF)、および米空軍研究所(AFRL)が支援した。
URL: http://news.mit.edu/2019/carbon-nanotubes-microprocessor-0828
(関連情報)
Nature 掲載論文(アブストラクトのみ:全文は有料)
Modern microprocessor built from complementary carbon nanotube transistors
URL: https://www.nature.com/articles/s41586-019-1493-8
<NEDO海外技術情報より>
Abstract
Electronics is approaching a major paradigm shift because silicon transistor scaling no longer yields historical energy-efficiency benefits, spurring research towards beyond-silicon nanotechnologies. In particular, carbon nanotube field-effect transistor (CNFET)-based digital circuits promise substantial energy-efficiency benefits, but the inability to perfectly control intrinsic nanoscale defects and variability in carbon nanotubes has precluded the realization of very-large-scale integrated systems. Here we overcome these challenges to demonstrate a beyond-silicon microprocessor built entirely from CNFETs. This 16-bit microprocessor is based on the RISC-V instruction set, runs standard 32-bit instructions on 16-bit data and addresses, comprises more than 14,000 complementary metal–oxide–semiconductor CNFETs and is designed and fabricated using industry-standard design flows and processes. We propose a manufacturing methodology for carbon nanotubes, a set of combined processing and design techniques for overcoming nanoscale imperfections at macroscopic scales across full wafer substrates. This work experimentally validates a promising path towards practical beyond-silicon electronic systems.