執筆者 | 本田 由紀 (東京大学) |
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発行日/NO. | 2019年1月 19-J-001 |
研究プロジェクト | 労働市場制度改革 |
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概要
本稿の目的は、30~50代の大卒男女有職者を対象とした調査データ(2018年1月に経済産業省が実施)を用いて、“大学での専門分野と仕事との関連度”(以下〈関連度〉と表記)が、仕事の客観的および主観的なアウトカムにいかなる影響を及ぼしているのか、そしてそもそもどのような要因が〈関連度〉を左右しているのかを、ジェンダーによる違いを考慮しつつ検討することにある。
日本では、仕事上で必要な知識やスキルは主に企業内教育訓練で習得され、大学での専門分野と仕事内容とのマッチングは希薄であるという認識が、社会意識としても研究上も広範に存在する中で、〈関連度〉の効果や規定要因についての経験的な検討は、比較的手薄なままであった。しかし、大学改革、労働生産性向上、「女性の活躍」がいずれも重要課題として浮上している現在の日本社会において、大学教育と仕事との順接的な接合関係を〈関連度〉という観点から模索する必要性は高まっている。
本稿の分析の結果、男性の正社員においては、他の諸要因を統制した上でも、〈関連度〉は収入および仕事満足度という職業的アウトカムを高めるポジティブな効果をもつことが見いだされた。他方で、女性の正社員では、〈関連度〉は仕事満足度を高めるが、収入を上昇させる効果は持っていなかった。その理由は主として、女性内部で相対的に賃金が高い管理職、専門職、事務職において〈関連度〉が男性と比べて低いこと、また理工系出身で〈関連度〉が高い場合に、女性では収入増につながっていないことによるものである。