2024-01-29 シャープ株式会社
左:小型月着陸実証機「SLIM」(イラスト、©JAXA)、右:「SLIM」に搭載している薄膜化合物太陽電池
シャープが開発・製造した薄膜化合物太陽電池を搭載し、誤差100m以内の「高精度着陸」を目指していた宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)の小型月着陸実証機「SLIM」が、1月20日(土)未明、月面への「高精度着陸」に成功し、着陸後も太陽電池が正常に稼働したことを確認しました。
当社は、1967年より宇宙用太陽電池の開発に着手し、1976年に実用衛星「うめ」に初搭載されました。以降、JAXAの認定を受けた国内唯一の太陽電池メーカーとして、約半世紀にわたり宇宙用太陽電池の開発、製造に取り組んでおり、これまでに当社製太陽電池を搭載した人工衛星は、約190基※2にのぼります。
「SLIM」に搭載している薄膜化合物太陽電池は、当社がNEDO※3の支援を受け2022年に当時世界最高※4の変換効率32.65%※5を達成した化合物3接合型太陽電池モジュール※6と同様の技術で開発。薄いフィルムで太陽電池セルを封止した構造のため、軽量かつ曲面への搭載も可能なフレキシブル性を備えており、高効率化と軽量化が求められる宇宙用途に適した仕様を実現しています。
当社は今後も、宇宙用太陽電池の研究開発を進め、JAXAをはじめとする人工衛星や宇宙探査プロジェクトに貢献してまいります。
■「SLIM」搭載薄膜化合物太陽電池の概要
構造 |
シート出力 |
シートサイズ |
シート搭載数 |
・化合物3接合型 ・フィルム封止 |
20.9W |
縦297 × 横271 × 厚さ0.25mm |
26シート |
※1 SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)はJAXAが開発した小型月着陸実証機で、将来の月惑星探査に必要な高精度着陸技術を小型探査機で実証する計画。(https://www.isas.jaxa.jp/home/slim/SLIM/index.html)
※2 2023年11月末現在。
※3 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構。
※4 2022年6月6日時点、研究レベルにおける太陽電池モジュールにおいて(シャープ調べ)。
※5 2022年2月、国立研究開発法人産業技術総合研究所(世界の太陽電池の公的測定機関の一つ)により、確認された数値[モジュール面積:965cm2、最大出力:31.51W]。
※6 インジウムやガリウム、ヒ素など、2種類以上の元素からなる化合物を材料とした光吸収層を3層重ね、各層で異なる波長の光を吸収させることで、高い変換効率を実現する太陽電池。
※7 搭載シート合計では約1.07kg。
■ シャープ 宇宙用太陽電池・化合物太陽電池 開発の歩み
1967年 単結晶シリコンを用いた宇宙用太陽電池の開発を開始
1972年 宇宙用シリコン太陽電池がJAXAの認定を取得
1976年 宇宙用太陽電池(単結晶シリコン太陽電池)を搭載した実用衛星「うめ」打ち上げ
2000年 宇宙用太陽電池のさらなる高効率化、軽量化、耐久性向上のために、化合物3接合型太陽
電池の研究開発を開始
2001年 NEDOの太陽光発電研究開発テーマへの参画を開始
2002年 化合物3接合型太陽電池がJAXAの認定を取得
2005年 化合物3接合型太陽電池を搭載した小型科学衛星「れいめい」打ち上げ
2009年 化合物3接合型太陽電池を搭載した温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」打ち上げ
2012年 化合物3接合型太陽電池を搭載した宇宙ステーション補給機「こうのとり3号」打ち上げ
2013年 化合物3接合型太陽電池セルで変換効率37.9%を達成(研究レベル)※7
集光型化合物3接合型太陽電池セル(302倍集光時)で変換効率44.4%を達成
(研究レベル)※7
2016年 化合物3接合型太陽電池モジュールで変換効率31.17%を達成※8
2019年 世界最高水準の高効率太陽電池を搭載した電動車の公道走行実証を開始
2020年 世界最高水準の高効率な太陽電池セルを活用し、電気自動車用太陽電池パネルを製作
2022年 化合物3接合型太陽電池モジュールで変換効率32.65%を達成※9
2023年 化合物3接合型太陽電池を搭載した小型月着陸実証機「SLIM」打ち上げ
2023年 化合物・シリコン積層型太陽電池モジュールで変換効率33.66%を達成※9
※7 NEDO「革新的太陽光発電技術研究開発」プロジェクトの一環として研究開発を実施。
※8 NEDO「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」プロジェクトの一環として研究開発を実施。
※9 NEDO「移動体用太陽電池の研究開発」プロジェクトの一環として研究開発を実施。
- (注)
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