2023-10-27 株式会社日本線路技術,東日本旅客鉄道株式会社,理化学研究所
〇東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR 東日本」)は、スマートメンテナンスの実現に向けて線路設備モニタリング装置を活用し、CBM を推進しております。
〇このたび、JR 東日本と理化学研究所は、AI のディープラーニングモデル(以下「DLM」)を開発しました。JR 東日本と株式会社日本線路技術(以下「NSG」)は、開発した DLM を活用し、線路設備モニタリング装置に AI を適用することで、線路設備の不良箇所を把握し、更なる高度な線路設備の点検を推進します。
1. 現状の課題
NSG は、モニタリングセンターを設置し、線路設備モニタリング装置で撮影した画像から線路設備の不良箇所を抽出しています。不良箇所を抽出する際には、閾値による自動判定と人による目視確認を行っています。自動判定は線路設備の多くを占める比較的構造が単純な箇所に適用しており、レール継目部のような構造が複雑な箇所においてはスタッフが直接確認をしています。目視確認には多くのスタッフを配置するとともに、抽出に多くの時間を要しています。
図 1 不良箇所抽出のイメージ
2. 開発した DLM について
DLM は、正常な設備と不良がある設備の画像を学習させた AI です。DLM を活用することで、画像の中から良否判定の対象となる設備を検出し、設備種別ごとに良否判定を実施します。従来の閾値設定による自動判定では継目ボルトの脱落およびゆるみのみ判定できましたが、DLM が対象とする設備は、レール継目部周辺部の状態やレールボンドの状態などについて、判定することが可能です。
図 2 AI による不良箇所判定
3. DLM の導入
従来、目視で行っていた業務の一部を AI に置き換え、管理を行います。(AI で管理できる設備例)
① レール継目板の損傷の有無
② レールボンドの脱落状況
図 3 AI による不良箇所の判定
4. DLM の導入により期待される効果
現在は、撮影された対象設備の画像をスタッフが目視で異常の有無を確認しています。今回開発した DLM を導入することで、様々な線路設備の不良箇所を自動で抽出することが可能となります。抽出した不良箇所のみスタッフの目視による確認を行うため、作業時間の削減が期待できます。(想定される作業時間削減効果:約 100 時間/月)
【参考】線路設備モニタリング装置の概要
・線路設備モニタリング装置は営業列車の床下に搭載されており、レール周辺の軌道材料の状態や軌道の状態を日々確認することが可能です。
2018 年 12 月 21 日発表: 理化学研究所×JR 東日本 線路設備モニタリングデータへの AI 活用に向けた共同研究の開始について
( https://www.jreast.co.jp/press/2018/20181221.pdf )