再現性良く高い光電変換効率を示すペロブスカイト太陽電池の作製手法を確立した

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2018/09/06  京都大学

若宮淳志 化学研究所教授、ジェイウェイ・リウ  同博士研究員、尾﨑雅司 工学研究科博士課程学生、薬丸信也 同修士課程学生、金光義彦 化学研究所教授、村田靖次郎 同教授、リチャード・マーディ 同助教、佐伯昭紀 大阪大学准教授らの研究グループは、溶液の塗布によるスズ系ペロブスカイト半導体膜の作製法の改良に取り組み、均一性が高く高品質な半導体膜を得ることができる独自の成膜法を開発しました。これにより、再現性が良く高い光電変換効率を示すペロブスカイト太陽電池を作製できる手法の確立に成功しました。
本研究成果は、2018年9月5日に、独国の国際学術誌「Angewandte Chemie」のオンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

鉛フリーペロブスカイト太陽電池の開発研究では、論文で報告された手法を試してみても、生成したペロブスカイト膜の黒色が作製の途中で消えてしまうなど、毎回得られる半導体膜の性質が異なり、この再現性の悪さが、世界中の研究者を悩ます課題でした。研究グループの学生や研究員とともに、「塗って乾かす」という一連の塗布の過程で一体何が生じているかを突き詰めて考えた結果、簡便でありながら再現性に優れた本手法の開発に成功しました。

これは、本太陽電池分野の発展のための大きな一歩であり、本手法を用いることで、鉛フリーのペロブスカイト太陽電池の開発研究が加速するものと期待されます。今後は、この技術をもとに、私たちも材料開発研究を進め、本太陽電池のさらなる高性能化とその実用化を目指します。

概要

本研究グループは、「温かい貧溶媒を用いるだけ」のHAT法と、「蓋をして加熱するだけ」で溶媒蒸気を制御するSVA法という、二つの簡便な独自の手法を開発し、これらを組み合わせることにより、均一性が高く高品質なスズ系ペロブスカイト半導体膜の作成法の確立に成功しました。これにより、再現性よく7%を超える光電変換効率を示す太陽電池デバイスが作製できることを実証しました。

本手法の確立により、国内外のさまざまな研究機関でも、均一な高品質ペロブスカイト膜を再現性よく作製することが可能になり、良好な光電変換効率を示すスズ系ペロブスカイト太陽電池を標準デバイスとして作製できるものと期待できます。今後、この技術をもとに、スズ系ペロブスカイト材料開発及びデバイス構造の改良・開発研究が大きく進み、環境負荷の少ないペロブスカイト太陽電池の実用化にむけて、開発研究がさらに活発化することが期待されます。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1002/anie.201808385

Jiewei Liu, Masashi Ozaki, Shinya Yakumaru, Taketo Handa, Ryosuke Nishikubo, Yoshihiko Kanemitsu, Akinori Saeki, Yasujiro Murata, Richard Murdey, Atsushi Wakamiya (2018). Lead-Free Solar Cells based on Tin Halide Perovskite Films with High Coverage and Improved Aggregation. Angewandte Chemie International Edition.

0501セラミックス及び無機化学製品0505化学装置及び設備
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