絶縁体の量子振動の観測に成功

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金属でも絶縁体でもない前例のない電子状態を発見

2018/09/06 京都大学,米国ミシガン大学,英国オックスフォード大学,米国ロスアラモス国立研究所

佐藤雄貴 理学研究科博士課程学生、笠原裕一 同准教授、松田祐司 同教授、伊賀文俊 茨城大学教授、杉本邦久 高輝度光科学研究センター主幹研究員、河口彰吾 同研究員らの研究グループは、米国ミシガン大学、英国オックスフォード大学、米国ロスアラモス国立研究所と共同で、本来電子を流さない絶縁体であるイッテルビウム12ホウ化物(YbB12)において、強磁場中で量子力学的効果により電気抵抗と磁化率が磁場とともに振動する現象(量子振動)を初めて観測しました。

本研究成果は、2018年8月31日に米国の科学雑誌「Science」のオンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

私達の身のまわりにある物質は、絶縁体と金属の2種類に分類されると考えられてきました。本研究成果はそのような従来の常識を覆すものであり、絶縁体とも金属とも区別できない新しい状態があることを示しました。このような新奇電子状態の研究を今後さらに進展させることで、従来の枠組みを超えた新現象の発見が期待されます。

概要

物質には電気を流す金属と流さない絶縁体の2種類が存在します。金属では「量子振動」という現象が起きることが知られています。この量子振動とは、強磁場中で量子力学的効果により電気抵抗や磁化率が磁場とともに振動する現象で、量子振動が観測されることは金属状態が実現していることを意味します。

ところが、近年「近藤絶縁体」と呼ばれる希土類元素を含んだ化合物サマリウム6ホウ化物で、磁化の量子振動が観測され注目されています。ただし、この絶縁体では、電気抵抗では量子振動が起きず、量子振動の起源や解釈を巡って大きな問題となっていました。

本研究では、別の近藤絶縁体イッテルビウム12ホウ化物(YbB12)に着目し、大型放射光施設SPring-8で結晶構造とその純度(単相性)を確認しました。続いて、高感度磁化測定(磁気トルク測定)および精密電気抵抗測定を、米国立強磁場研究所において極低温かつ高磁場中で行いました。その結果、このYbB12において、磁化だけでなく電気抵抗における量子振動を世界で初めて観測しました。さらに、この量子振動をもたらす電子状態が、通常の金属と同様のふるまいを示すことも明らかとなりました。本研究成果により、YbB12は絶縁体とも金属とも区別することができない前例のない電子状態をもつことが示唆されます。

図:YbB12の結晶構造、金属における磁場中のフェルミ面、量子振動の例

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1126/science.aap9607

Z. Xiang, Y. Kasahara, T. Asaba, B. Lawson, C. Tinsman, Lu Chen, K. Sugimoto, S. Kawaguchi, Y. Sato, G. Li, S. Yao, Y. L. Chen, F. Iga, John Singleton, Y. Matsuda, Lu Li (2018). Quantum oscillations of electrical resistivity in an insulator. Science, eaap9607.

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