2023-01-12 名古屋大学,科学技術振興機
ポイント
- グラファイトとの相互作用を利用して、触媒分子のメタン酸化活性を飛躍的に高める方法を開発し、天然酵素に匹敵するメタン酸化触媒活性を達成した。
- 自然界に豊富に存在する次世代資源であるメタンを、温和な反応条件で工業的に有用な有機小分子へと高効率に変換する方法を開発した。
- 本触媒を用いれば、化学的に安定なメタンでも100度以下の温和な反応条件の水溶液中で高効率に有用有機小分子へと変換でき、通常のメタン改質に必要な数百度の高温を必要としない。
東海国立大学機構 名古屋大学 大学院理学研究科の山田 泰之 准教授、豊田 結香 研究員、田中 健太郎 教授らの研究グループは、同志社大学の人見 穣 教授、分子科学研究所の長坂 将成 助教、小板谷 貴典 助教、田中 清尚 准教授、高谷 光 准教授、九州大学の吉澤 一成 教授、辻 雄太 准教授、北海道大学の高草木 達 准教授、三輪(有賀) 寛子 助教、東京都立大学の中谷 直輝 准教授、ブルカー・ジャパン株式会社の工藤 寿治 博士との共同研究で、天然のメタン酸化酵素に匹敵するメタン酸化触媒能を持つ人工分子触媒を新たに開発しました。
本研究では、2つの平面性分子が面と面とを向かい合わせて重なった構造を持つ2階建て型分子をグラファイト上に組織化するという方法により、温和な反応条件下の水溶液中において、極めて高効率に、メタンを有用有機分子へと変換できる触媒を開発しました。この触媒のメタン活性化能は、天然のメタン酸化酵素の一種であるpMMOにも匹敵し、化学的に安定なメタンをも温和な条件の水溶液中で化学変換できることから、木質系廃棄物などのバイオマス、難分解性ポリマーや廃油など、環境汚染の原因となっている有機物や未利用の有機資源を、低環境負荷で有用有機物に分解・資源化する目的にも利用できる可能性があり、SDGsに貢献できるテクノロジーの1つとなると考えられます。
本研究成果は、現地時間2023年1月10日付アメリカ化学会「JACS Au」に掲載されました。
本研究は、2015年度から始まった科学技術振興機構 さきがけ研究『革新的触媒の科学と創製』(JPMJPR17SB)、文部科学省 科研費 基盤研究A(15H02167、19H00902)、基盤研究B(19H02787、22H02156)、挑戦的萌芽研究(16K13961、22K19045)、立松財団、岩谷直治記念財団、豊秋奨学会などの支援のもとで行われたものです。
<論文タイトル>
- “Stacking of Cofacially Stacked Iron Phthalocyanine Dimer on Graphite Achieved High Catalytic CH4 Oxidation Activity Comparable to that of pMMO”
- DOI:10.1021/jacsau.2c00618
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
山田 泰之(ヤマダ ヤスユキ)
東海国立大学機構 名古屋大学 大学院理学研究科 准教授
<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
東海国立大学機構 名古屋大学 広報室
科学技術振興機構 広報課