ヒドリド超イオン導電体の発見~H–超イオン導電性を示す固体電解質材料を初めて創出~

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※6 高圧合成法
原料を圧力媒体内に密閉してGPa(ギガパスカル:1GPaが1万気圧に相当)オーダーの高圧下で熱処理する合成法。高圧相の合成や、水素やリチウムのように揮発性の高い元素を反応系内に留めることができるため、酸水素化物の合成に適している。

※7 構造相転移
物質の有する結晶構造が温度や圧力などの外的要因によって異なる対称性の構造に変化する現象。

※8 酸化還元電位
標準酸化還元反応における電子授受に必要な電位。水素標準電極(SHE:2H+ + 2e = H2)に対してプラス側に大きな電位を持つ物質を貴な物質、マイナス側に大きな電位を持つものを卑な物質とする。電子の放出または受取りやすさの定量的な尺度でもあり、マイナス側に大きいほど(卑な物質)電子供与性が強い。ヒドリドでのH2 + 2e = 2Hの酸化還元電位は、水素標準電極に対して–2.25 Vの電位である。リチウム二次電池に用いられているLi、次世代二次電池への検討がなされているマグネシウム(Mg)の酸化還元電位は–3.04 Vと–2.38 Vであり、HはMgと同程度の標準酸化還元電位をもつ。

※9 固体イオニクス
固体内のイオンの動きを研究する学問分野。高いイオン導電率を持ついわゆる固体電解質やイオン・電子混合導電体を対象とし、それらについての基礎研究と利用技術の開発が中心課題となっている。

※10 K2NiF4型構造
陽イオンが陰イオンと6配位8面体を構成しているペロブスカイト型構造と岩塩型構造が一層ずつ積層した構造。イオン導電体、超伝導体、磁性体など、さまざまな物性を示す物質が発見されている結晶構造。

※11 大強度陽子加速器施設J-PARC
高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構が共同で茨城県東海村に建設した大強度陽子加速器施設と利用施設群の総称。加速した陽子を原子核標的に衝突させることにより発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの二次粒子を用いて、物質、生命科学、原子核、素粒子物理学などの最先端学術研究及び産業利用がおこなわれている。

※12 中性子回折測定
中性子線の回折を利用して物質の結晶構造や磁気構造を調べる測定。X線回折ではX線が外殻電子によって散乱するのに対し、中性子回折では、原子核が散乱に関与する。このため、X線では検出しにくい水素やリチウムなどの軽元素の情報を得るのに適している。本研究では、中性子回折を用いてBLHOに含まれる水素濃度と結晶格子内の水素の位置を決定した。

※13 大型放射光施設SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設。放射光とは、電子を光速に近い速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、強力な電磁波のことである。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究がおこなわれている。

※14 交流インピーダンス法
交流電圧を用いたイオン導電率の一般的な測定手法。印加する交流電圧に対する周波数応答の違いを利用し、目的物質の粒内抵抗と粒界抵抗などの成分を分離して求めることが可能。

15 水素濃淡電池による起電力測定
水素濃度の差によって発生する起電力を利用した電池。理論電圧と実測値を比較することで輸率を見積もることができる。

※16 中性子準弾性散乱測定
中性子ビームを物質の構成原子に当てると、原子に当たった中性子は散乱される。中性子が散乱される際に、エネルギーのやり取りがある場合には、散乱中性子のエネルギーは入射中性子のそれに比べて変化している。このエネルギー変化を伴う中性子の散乱を中性子準弾性散乱という。本研究では、中性子ビームを水素に当て、準弾性散乱された中性子の方向やエネルギー変化を調べることにより、水素の運動の大きさや速さなどを解析した。

論文情報

掲載誌:Nature Materials

論文タイトル:“Hydride-ion-conducting K2NiF4-type Ba-Li oxyhydride solid electrolyte”(K2NiF4型構造を有するBa-Li酸水素化物系ヒドリドイオン導電性固体電解質)

著者:Fumitaka Takeiri1,2, Akihiro Watanabe1,3, Kei Okamoto1,2, Dominic Bresser4,5,6, Sandrine Lyonnard4,7, Bernhard Frick8, Asad Ali1,2, Yumiko Imai1, Masako Nishikawa1, Masao Yonemura9,10, Takashi Saito9,10, Kazutaka Ikeda9,10, Toshiya Otomo9,10, Takashi Kamiyama9,10, Ryoji Kanno3, and Genki Kobayashi1,2

掲載日:2022年1月13日(英国ロンドン時間午後4時)オンライン公開

DOI:10.1038/s41563-021-01175-0

研究グループ

1分子科学研究所 物質分子科学研究領域
2総合研究大学院大学 物理科学研究科 構造分子科学専攻
3東京工業大学 科学技術創成研究院 全固体電池研究センター
4(仏)グルノーブル・アルプス大学
5(独)ヘルムホルツ研究所
6(独)カールスルーエ工科大
7(仏)フランス原子力・代替エネルギー庁
8(仏)ラウエ・ランジュバン研究所 (ILL)
9高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 物質構造科学研究所
10総合研究大学院大学 高エネルギー加速器科学研究科

研究サポート

• JSTさきがけ「新物質科学と元素戦略」(JPMJPR1295)
• NEDO エネルギー・環境新技術先導研究プログラム (16823906)
• 文部科学省科学研究費助成事業新学術領域「ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成」(18H05516, 18H05518)
• 文部科学省科学研究費助成事業新学術領域「複合アニオン化合物の創製と新機能」(17H05492, 19H04710)
• 日本学術振興会 科学研究費補助金 (15H05497, 17H06145, 20H02828)
• 中性子共同利用S1型実験課題(2014S06, 2014S10, 2019S10)
• SPring-8実験課題 (2016A1673, 2016B1767, 2018B1099)
• ラウエ・ランジュバン研究所 実験課題(http://doi.ill.fr/10.5291/ILL-DATA.7-03-144)

研究に関するお問い合わせ先

小林玄器(こばやしげんき)
分子科学研究所 准教授

報道担当

自然科学研究機構・分子科学研究所 研究力強化戦略室 広報担当
東京工業大学 総務部 広報課
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 広報室
J-PARCセンター 広報セクション

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