2021-10-14 神戸大学,金沢大学,科学技術振興機構
ポイント
- 誘電体メタ表面により光の磁場成分を増強し、分子のスピン反転励起を増大する技術を開発。
- 項間交差に伴うエネルギー損失の抑制により、低エネルギー光を有効利用。
- スピン反転を利用した新しい光増感反応の開発、光有機合成、光医療技術の高効率化に期待。
神戸大学 大学院工学研究科の杉本 泰 助教(JST さきがけ研究員)、藤井 稔 教授、金沢大学 理工研究域物質化学系の古山 渓行 准教授(JST さきがけ研究員)らの研究グループは、光磁場を増強するナノ構造を形成し、分子のスピン反転を伴う光学遷移を大幅に促進する技術を開発しました。
分子の励起三重項状態は、寿命が長くさまざまな光化学反応に利用されます。しかし、基底(一重項)状態から三重項状態への励起は電子スピンの反転を伴う“禁制遷移”であるため、三重項状態は項間交差を介した間接的な過程で励起されています。本研究では、誘電体ナノ構造の配列構造(光メタ表面)の磁場増強効果を利用して、これまでほとんど考慮されなかった“磁気双極子遷移”を促進し、三重項状態間の励起効率を飛躍的に増大させることに成功しました。また、従来よりも低いエネルギーの光でターゲット分子を励起三重項状態にすることを実現しました。
本成果は、分子の光励起のエネルギー効率を大幅に向上させる新しい技術であり、今後、新しい光反応制御手法の開発につながると期待されます。この研究成果は、2021年10月13日に、国際科学誌「Small」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究事業 さきがけ「電子やイオン等の能動的制御と反応」研究領域(研究総括:関根 泰)における研究課題「Mie共鳴による磁場増強を利用した光化学反応プラットフォームの構築」(研究者:杉本 泰)および「光触媒の能動的制御による近赤外光合成プロセスの開発」(研究者:古山 渓行)の支援を受けて行われました。
<論文タイトル>
- “Direct excitation of triplet state of molecule by enhanced magnetic field of dielectric metasurfaces”
- DOI:10.1002/smll.202104458
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
杉本 泰(スギモト ヒロシ)
神戸大学 大学院工学研究科 助教
古山 渓行(フルヤマ タニユキ)
金沢大学 理工研究域物質化学系 准教授
<JST事業に関すること>
嶋林 ゆう子(シマバヤシ ユウコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
<報道担当>
神戸大学 総務部 広報課
金沢大学 理工系事務部 総務課 総務係
科学技術振興機構 広報課